認知症とともにあるウェブメディア

コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

エビの身の弾力に苦労する母のためにあの手この手 私の夏の自由研究

駒村多恵さん
駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。今回は、普段から色々な工夫をこらした介護食を作っている駒村さんが、嚥下障害があり、エビを噛みにくそうにしている母親のために、様々な調理法を試してみた時のお話です。

介護食をストック

夏休み、皆さんはどんなふうに過ごしましたか? 今年は南海トラフ注意情報に慄(おのの)いたり、突然の豪雨に酷い目にあったり。急な予定変更に四苦八苦された方も多かったのではないでしょうか。

母が元気な頃は、春先から旅行の計画を立て、公共交通機関やホテル、観光案内所にバリアフリーの問い合わせをして、乗り継ぎや動線、備品の確認などなど、綿密な準備をして万全を期して出かけていました。しかし、最近は万全の準備で出かけたとしても、母にとっては楽しみよりも移動の疲れの方が勝るのではないかと思い、家でのんびり過ごすようになりました。

今年はいつもより長めの夏休みで、すっかり気が緩んだせいか、私は風邪をひいてしまいました。だいたい、長い休みに入ると私は体調を崩します。医療機関もお盆休みで早めの治療が叶わず苦労しました。お休み期間は一日中手厚いケアをしようと思っていたのに、母と部屋を分けて近づかないようにするという顛末(てんまつ)で、働いていないと元気でいられないなんて、自分の貧乏性ぶりに辟易します。

とはいえ、長い夏休み。元気だった時期は、せっせと介護食を作っていました。時間もあるからと、作ったことのないものや、噛みやすさを追求するべく、色々な切り方を試しました。例えば、エビ。身に弾力があり、母も噛みきることに苦労していました。いつも何となく切り込みを入れていましたが、この機会に何がベストか模索することにしました。

包丁の腹で潰して細かく切り込みを入れたもの(左)。潰して叩いて丸めたもの(右上)、ざっくりと切り込みを入れたもの(右下)それぞれに塩をし、片栗粉を振りました
包丁の腹で潰して細かく切り込みを入れたもの(左)。潰して叩いて丸めたもの(右上)、ざっくりと切り込みを入れたもの(右下)それぞれに塩をし、片栗粉を振りました

それぞれ焼いてみたのですが、フライパンが劣化していたせいか、裏返すときにくっついて切り込みのはずがバラバラに! 細かく切り込みを入れるのは要注意です。

噛みやすいようにと思ってたくさん切り込みを入れたことが仇になってしまったようです
噛みやすいようにと思ってたくさん切り込みを入れたことが仇(あだ)になってしまったようです
両面焼いたエビは火が通りすぎないように、一旦取り出しておきました
両面焼いたエビは火が通りすぎないように、一旦取り出しておきました

 エビチリ風の炒め物を作ってみることにしました。
一緒に炒めたのは、ナスとトマト。最近のナスは白ナスや、緑のナスなど加熱するとトロッとした食感になる品種が増えていて、そういう品種を見かけると買うようにしています。野菜から出るとろみで飲み込みをアシストしようという作戦。皮は細かく切り込みを入れると噛みやすくなります。

今回は、はじめましての、新潟の伝統野菜のなす。キャッチコピーに惹かれて買ってみました
今回は、はじめましての、新潟の伝統野菜のなす。キャッチコピーに惹かれて買ってみました

ナスに火が通ったところに合わせ調味料を入れて沸かし、トマトと一緒にエビを戻し入れます。

ここで味見。とろみ具合はいい感じなのですが、味見をすると、ややしょっぱめ…。今日は切り方を変えてそれぞれに塩をしたので、結果、塩を振りすぎていたようです
ここで味見。とろみ具合はいい感じなのですが、味見をすると、ややしょっぱめ…。今日は切り方を変えてそれぞれに塩をしたので、結果、塩を振りすぎていたようです

甘みを足したいなと思い、たまたま頂き物でウチにあった生姜シロップを試しに使ってみました。

濃度調整しながら甘みを調整するときにはハチミツやメープルシロップをよく使うのですが、こちらも、とろみアシストアイテムになりそうです
濃度調整しながら甘みを調整するときにはハチミツやメープルシロップをよく使うのですが、こちらも、とろみアシストアイテムになりそうです

試行錯誤の末、完成!

なすもトマトもトロリとしています
なすもトマトもトロリとしています

問題は、エビの噛みやすさです。

左から、叩いて丸めたもの。潰して切り込みをいれたもの。軽めに切り込みを入れたもの。トマトの皮は食べるときに取り除きます
左から、叩いて丸めたもの。潰して切り込みをいれたもの。軽めに切り込みを入れたもの。トマトの皮は食べるときに取り除きます

食べ比べてみると、叩いて丸めたものの圧勝。切り込みに関していうと、細かい切り込みはバラバラになったときにまとまりづらくなるので、歯があって、常食に近いものが食べられる人は潰して軽い切り込みくらいでよいかなと思いました。もっと嚥下障害が進んでいる人は、これをミキサーにかけてペースト状にしても悪くないと思いますが、最終的には次の嚥下外来で念のための評価を受ける予定。こうやって少しずつメニューが増えていくのを楽しみながら作っていたら、夏休みはあっという間に終了。2学期も頑張ろう!

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア