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母が老人ホームへ ホッとしたのも束の間、頻繁に来る連絡に辟易【お悩み相談室】

話をする母と娘、Getty Images
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認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

 Q.父が亡くなったのを機に母(80代)が老人ホームに入居し、ホッとしていたところ「どこの何を買ってきて」「ひざが痛いから病院に連れて行って」など、しょっちゅう連絡がきて振り回されています。在宅介護をできなかったうしろめたさもあり、すべて対応していますが、自分の家庭や仕事もあり、疲れます(60代・女性)

A.それは大変なことだと思います。相談者は、お母さんが老人ホームに入居して「ホッとした」とのことですが、お母さん自身はどうでしょうか。もしかしたら、慣れない環境の中で不安や不満、孤独を感じているのかもしれません。今のお母さんがどんな思いで老人ホームで過ごしているのかを考えると、相談者からみてわがままだと感じられるようなお母さんの言動が、違って見えるかもしれません。

面会に行ったときに「今困っていることはない?」「スタッフの方はどんなふうに関わってくれるの?」「お友だちはできた?」など、お母さんに現在のホームでの様子を直接聞いてみるといいと思います。話す中で、「やることがなくてつまらない」「好きなものを自由に食べられない」「スタッフの対応が気になる」など、お母さんが抱えている不満なども出てくるかもしれません。

そうした不満を聞き出してスタッフと情報を共有できたら、お母さんが家族を頼らなくても、老人ホームの中で不安や不満、孤独を解消してくれるような人が出てくるのではないでしょうか。そうすれば相談者の負担は軽くなっていくはずです。とはいえ、すべてをスタッフに任せるのではなく、スタッフ、ご家族が一緒になってお母さんのケアをしていけるといいですね。ご家族も相談者だけではなく、ご兄弟など、なるべく多くの人が関わって面会に行く曜日などを分担しておくと、それぞれにかかる負担は軽くなります。

また、お母さんの要望に優先順位をつけて対応するというのも、1つの方法です。要望のすべてにすぐに対応していたら疲れるのも当然なので、時間がかかりそうなことはお母さんにもその旨を説明して、後回しにしていいと思います。「うしろめたさから対応している」とのことですが、お母さんに対する申し訳ないという気持ちを、これまでお母さんがしてくれたことへの感謝に変えると、お母さんに対する声がけも変わってくるはずです。お母さんも「ごめんね」と言われるより、「ありがとう」と言われるほうが嬉しいと思うのです。

お母さんに頼まれたことだけをやるのではなく、先手を打つという方法もあります。「おいしいお菓子を見つけたから、次の面会で持っていくね」「連れて行きたい場所があるから、今度行こうね」など、相談者側からアクションを起こすと、振り回されて疲れるという感覚はなくなるかもしれません。お母さんからの要望も減るのではないでしょうか。

私が勤める特養でも、入居したばかりの方が職員に遠慮して何でも家族に頼むというのはよくあることです。時間の経過とともに職員との関係性ができてくると、ご家族に連絡する頻度は減っていきます。お母さんも単純に、老人ホームに慣れていなくて、要望を職員に言いづらいだけかもしれません。お母さんにとって老人ホームが安心して過ごせる場になるといいですね。

【まとめ】老人ホームに入居した母から頻繁に用事を頼まれ、疲れるときには?

  • 今どんな思いで過ごしているのかをお母さんに聞いて、不満などがあればスタッフと共有する
  • お母さんからの要望に優先順位をつけて、後回しにしてもいい要件を見極める
  • 頼まれたことだけをやるのではなく、相談者からアクションを起こす

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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