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食べることが難しくなってきた母 施設入所した方がいい?【お悩み相談室】

食事をする高齢者、Getty Images
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認知症介護指導者の上村尚之さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の母(80代)と同居しています。最近、食べ物をなかなかのみ込まなかったり、吐き出してしまったりして、食事が難しくなってきました。いよいよ施設に入居したほうがいいのか、まだ家でできる対策はあるのか。悩んでいます(50代・女性)

A.食事をするのが難しくなってきたというだけで、施設入居を考えるのはまだ早いと感じます。こうしたケースはよくあるのですが、私たち専門職は、さまざまな仮説をたてて、介護の領域でできることを探っていきます。

まず、口の中にトラブルが起きていないかどうか、例えば口の中に傷ができていて、食べるときに痛みが出ているのではないか、入れ歯が合っていなくてうまくかめなくなっているのではないか、といったことを疑い、口の中を見せてもらったり、訪問歯科医師に相談したりします。よくあるケースが入れ歯などの問題で「かたくて食べられない」ということ。本人が直接訴えなくても、プリンやゼリーなどやわらかいものなら食べられるといった場合は、このケースが考えられます。口の中に問題がなさそうであれば、食べ物の嗜好が変わってきたのではないかといったことを考えます。

原因を探るうえでヒントになるのが、食べられた日の状況です。介護を一生懸命にしていると、どうしてもうまくいかなかったときのことが記憶に残りやすいものです。しかし日常の介護においては、うまくいったときの状況をよく観察して記憶しておくことが大事なのです。食べられた日の環境、時間帯、メニューなどをチェックして記録しておくと、ヒントになると思います。

また、確認しておきたいのが、体重の増減と水分摂取の状況です。体重が急激に減っていたり、水分もとれていなかったりすれば、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

90代のある利用者で、チョコレートしか食べないという方がいたのですが、不思議と体重や血液検査には問題がないということがありました。まずはお母さんが好きなもの、食べられるものを中心に考えるというのも1つの方法です。栄養バランスが気になる場合、水分が摂れるのであれば野菜ジュースなどで補えると思います。

認知症が進行すると、食べものを認識できなかったり、口の中に入れる、かむ、のみ込むといった手順をうまくできなくなったりすることがあります。そうなると、家族だけで解決するのは難しいので、認知症ケアのプロにアドバイスをもらうことをおすすめします。例えばショートステイなどを利用すると、食事の様子をチェックしたうえで、ほかの摂取方法などを提案してもらえるかもしれません。どうしても食べない理由がわからないという場合も、一度チェックしてもらってはいかがでしょうか。

いずれにしても相談者だけで背負うのは大変なことなので、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど、専門職に相談してほしいと思います。

【まとめ】認知症の母の食事が難しくなり、いよいよ施設を検討したほうがいいのか悩むときには?

  • 何かしら原因があるはずなので、まずはそれを探る
  • 食べられたときの環境や時間帯、メニューをチェックする
  • 急激に体重が減っていたり、水分も摂れていなかったりすればかかりつけ医に相談する
  • 好きなもの、食べられるものを中心に考える
  • ショートステイを利用するなどして、専門職に食事の様子をチェックしてもらったうえでアドバイスをもらう

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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