移乗介助中に利用者が転倒し骨折 責任を感じて夜も眠れません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.老人ホームで介護スタッフとして働いています。利用者の方を車イスに乗せるときに、その方がふらついて転倒し、骨折してしまいました。自分のせいでこのまま寝たきりになったらと思うと、夜も眠れません(20代・男性)
A.医療従事者と同じように、介護職も人の命に関わる仕事です。私も相談者のケースに近い経験をしたことがありますし、ほかの多くの介護職の人も経験していることだと思います。利用者の人生に大きな影響を与えてしまったと夜眠れなくなる人もいれば、食事がのどを通らなくなる人もいますし、介護職を辞めたくなる人もいます。この仕事は自分には向いていない、二度と同じような思いをしたくないといった理由で、実際に辞職してしまう人もいます。
しかし、そこまで思い詰めるということは、強い責任感があるということですし、それは介護職に必要な視点です。それだけの強い思いがあれば、次の一歩も踏み出せるはずです。起きてしまったことは変えられません。大事なのはこれから先のことです。もしこの利用者の方が寝たきりになってしまったら、自分には何ができるのかを考えて、自分なりに責任を果たす方法を考えてみてください。また、今後ほかの利用者にも同じようなことが起こらないように、どうしたらいいのかを考えることも大事です。
なかなか前を向けないときには、同僚や上司にこうしたときにどう立ち直ったのかを聞いてみるといいと思います。私自身は似たような経験をしたときに、自分のケアが悪かったのではないかとすごく自分を責めました。そんなときに同僚が「大丈夫」と肩をたたいてくれたことから、同じことが起きないように、ほかのスタッフにも伝えていこうという気持ちになり、何とか立ち直ることができました。利用者のADL(日常生活動作)のレベルなどによっては、どんなに気をつけても起きてしまう事故というのはあります。長年介護職に携わっている人は、こうした事故を経験していると思うので、参考になるアドバイスをもらえるのではないでしょうか。
落ち込んだままでいると、集中力が低下して再び同じようなことが起こりかねません。介護職は大変なこともありますが、利用者の大事な余生をお手伝いさせてもらえるやりがいのある仕事です。経験を糧にして前に進んでほしいと思います。
【まとめ】介助中に利用者が転倒、骨折してしまい、このまま寝たきりになったらと思うと心配で夜も眠れないときには?
- 心配で夜も眠れないということは、それだけ責任感があるということ。自分が介護職に向いていないとは考えないようにする
- もし利用者が寝たきりになってしまったら、自分には何ができるのかを考える
- 今後同じようなことが起こらないように、どうしたらいいのかを考える
- 立ち直れないときには、同僚や上司にアドバイスをもらう
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫