戦火に焼かれた友を思って流した涙 語り部の言葉に耳を傾け平和を願う
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
夏が来るたびに、ケイトウの紅(あか)い花に
涙した人はもういない。
戦火で焼かれた友を悼み、
70年以上枯れなかった涙は今どこに。
夏が来るたびに、暗い目で
軍歌を歌った人はもういない。
少年の日を手繰(たぐ)るような、
しわがれた声は今どこへ。
あの涙を忘れぬうちに。
あの声が消えないうちに。
私たちに託されたものを、今いちど。
夏が来るたびに、
私の周りから戦争体験を話してくださっていた方が、
ひとりまたひとりと去っていかれます。
振り返れば、高齢の方々に実際の戦争体験を伝え聞けた環境は、
どんなに恵まれていたのでしょうか。
いまだ絶えることのない、遠い国の戦火。
がれきの下に押し込められた残虐に思いをはせ、
せめて平和を願いつづけるためには、
私たちは、今いちど、
周りの高齢の方々の声に、耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。
2024年。
戦後79年目の夏を迎えます。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》