認知症の一歩手前との診断 途方に暮れた私がみつけた「安心の場所」
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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最近、物忘れが増えた私。
まだ、65歳になったばっかりだけれど、
念のため、脳神経内科で検査を受けてみた。結果は……
「軽度認知障害(MCI)ですね。認知症の手前の状態ではありますが、
必ず認知症になるわけではありません」
私はショックを受けた。
だから医師の指導を受けながらも、
心中おだやかではいられなかった。
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帰宅し、私は途方にくれた。
物忘れが多いくらいで、生活にそこまで支障はきたしていない。
それに、もし認知症になったとしても、
進行は5年や10年単位で、ゆっくり進むことが多いという。
だから、さし迫った不安はないはずなのに、
私はすっかり落ち込んだ。
認知症になったら、どう暮らしたらいいんだろう?
介護保険サービスって、私でも使えるの?
どうしよう。私、なんにも知らない。
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それから私は勇気を出して、
「地域包括支援センター」を初めて、訪ねた。
ここでは高齢者の心配事や、介護の相談にのってくれるという。
主任ケアマネジャーさんとの相談がはじまって数分、
安心で私の目には涙がにじんだ。
——来て良かった!
私の肩の荷は、いつのまにか半分になっていた。
介護サービスを利用されたことがある人ならば、
『地域包括支援センター』というと、
「なじみの安心の場所」とイメージされる方も多いのではないでしょうか?
ただ、介護サービスを利用したことがない人の多くは、
「耳慣れない、入りづらい場所」と思われるかもしれません。
地域包括支援センターとは、どこの自治体にも必ずある、
高齢者やそのご家族のための、地域の相談窓口です。
主任ケアマネジャー・社会福祉士・保健師などがチームをつくって、
高齢者やそのご家族からの相談を、無料で気軽に受けてくれます。
「MCIと診断されて、これからの暮らしが不安」
「介護サービスは、どうやったら使えるの?」など、
ご自身の悩みはもちろん、
「ひとりで住む母が、悪質なセールスにあっているかもしれない。どうしたらいい?」など、
ご家族の心配事にも、対応をしてくれます。
ただ利用する場合は、高齢者ご本人が住む地域ごとに担当のセンターが分かれているので、注意が必要です。
いつもの町に目をこらせばきっと、
不安を安心に変えてくれるその場所は、すぐに見つかるはずです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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