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親の介護で家を空けられず、子どもと旅行にも行けません【お悩み相談室】

家の中で遊ぶ子ども、Getty Images
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認知症介護指導者の椎名淳一さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.私の家族と認知症の父、3世代で暮らしています。父の介護で家をあけることができず、子どもたちに我慢させることが多いので、父を預けて旅行に連れて行きたいのですが、以前ショートステイを利用したら行きたくないと大暴れしたので、ためらいます(40代・女性)

A.ご家族での旅行、ぜひ行ってください。子どもたちのためというのはもちろん、相談者ご自身もお父さんと離れてゆっくりと過ごす時間が必要だと思います。

私が勤めている介護老人保健施設(老健)は、ショートステイやデイケア(通所リハビリ)のサービスも提供しています。ショートステイに来て、相談者のお父さんのように「息子たちはどこに行った?」「帰るから息子に電話してくれ」と言って攻撃的になる方もいらっしゃいます。私たちスタッフはまず話を聞いて、そのうえでなぜショートステイで過ごさなければならないのか、ショートステイではどんなふうに過ごすのかといったことをていねいに説明します。するとだんだん落ち着いてきて、さらにきちんと食事が提供される、居室の近くにトイレがあるといったことがわかってくると、リロケーションダメージ(急激な環境の変化による心身への悪影響)が少しずつ緩んで、受け入れられるようになっていきます。

相談者も、お父さんをショートステイに預ける理由や期間、ショートステイとはどのような場所でどのように1日を過ごすのかについて、事前に説明できるといいかもしれません。ただし、事前に細かく説明しすぎると逆に心配しすぎる方もいるので、本人の性格によるところもあります。少なくとも「どうしても子どもたちを旅行に連れて行きたいから、その間だけごめんね」といったことは伝えておいたほうがいいと思います。

また、安心して預けられるような信頼できるショートステイ先を見つけられるといいですね。多くの特養や老健は、デイサービスやデイケア、ショートステイなどのサービスも提供しています。普段通っているデイサービスと同じ施設のショートステイであれば、全く知らない場所に泊まるよりも安心できるのではないでしょうか。「通い」「訪問」「泊まり」のサービスがある「小規模多機能型居宅介護施設」は、どれを利用しても、ケアするスタッフが同じなのでより安心できるかもしれません。

デイサービスに通っていないとしたら、まずはデイサービスに通うことも検討してみるといいでしょう。家族での介護は負担やストレスが大きいので、限界を迎える前にさまざまなサービスを利用してほしいと思います。

【まとめ】ショートステイで暴れたことがある父。子どもたちを旅行に連れて行きたくても家をあけられないときには?

  • ショートステイに預ける理由やショートステイがどのような場所かを事前にていねいに伝える
  • お父さんが安心して過ごせるような、信頼できるショートステイ先を見つける
  • 通っているデイサービスなどと同じ施設のショートステイを利用する

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫

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