暑くなってきてもエアコンを拒み、水分もとらない父が心配【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症介護指導者の落川晃央さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.義父(80代)と私の家族とで二世帯住宅に住んでいます。何でも1人でできる義父ですが、たまに様子を見に行くと、暑くなってきたのにエアコンをつけていません。私がつけようとするとやめてくれと拒否します。水分をとるように伝えても飲んでいる気配がなく心配です(50代・女性)
A.高齢の方にはお義父さんのように、エアコンが苦手な方がいらっしゃいます。冷たい風が体に当たるのが嫌だという方もいらっしゃいますし、電気代が高くなることを気にされる方もいらっしゃいます。もしかしたら、電気料金の値上げについてのニュースなどを見て、我慢できるうちはつけないでおこうと考えていらっしゃるかもしれません。あるいは、高齢になって判断力が低下し、「暑いからエアコンをつける」という考えにいたらない可能性もあります。私たちの感覚では、暑かったらエアコンをつけるというのが当たり前のことになっていますが、お義父さんにとってはそうではないのかもしれません。まずは、お義父さんにとってエアコンがどういうものかを知ったうえで、対策を考えることが大事だと思います。
・エアコンの風が苦手なら、それ以外の方法で熱中症対策を考える
扇風機をつける、冷却シートを座面に敷く、冷感タオルを首に巻くなど、エアコン以外にも暑さ対策はあるので、お義父さんが受け入れやすい方法を見つけられるといいですね。
・電気代を気にしているなら、エアコン使用時にかかる電気代を具体的に示す
漠然と「エアコンは電気代が高い」と思っているだけかもしれないので、「1時間つけると〇円だよ」というように、具体的な金額を伝えると安心できるかもしれません。1カ月の電気代ではなく1時間など、できるだけ細分化して金額を伝えるほうが、安く感じるものです。
・アラーム付きの熱中症計を利用する
高齢の方は暑さを感じにくい場合があるので、温度や湿度などから、熱中症のリスクがある状況になるとアラームが鳴る「熱中症計」が役立つこともあります。危険な状況だということがお義父さんにも理解でき、エアコンをつけるきっかけになるのではないでしょうか。
・周囲で起きた事例を伝える
身近な人などの事例を伝えるのもおすすめです。私の経験では、エアコンを使わなかったことで悪いことが起きたという事例より、エアコンを使ったことでよいことがあったという事例を伝えるほうが、受け入れてもらいやすい傾向があります。例えば、「熱中症で高齢者が亡くなったニュースをやっていたよ」と言うと「私は大丈夫」と反発されやすいのですが、「近所の○○さんがエアコンを使うようになってから体調がいいらしいよ」と言うと「じゃあ使ってみようか」と素直に受け入れやすくなるようです。
水分に関しては本人がのどの渇きを感じないと、自分で用意して飲むのは難しいと思います。お義父さんが好きな飲み物があれば持って行って「氷も入れておいたので、溶ける前に飲んでくださいね」と、手を伸ばせる場所に置いておくと飲みやすいのではないでしょうか。
「お義父さんのことを心配している」「お義父さんに何かあったら私たちも困る」というように、家族としての思いを伝えることも大事です。自分のためではなく家族のためにと考えると、すんなり受け入れられることもあるのではないでしょうか。
【まとめ】暑いのでエアコンをつけようとすると義父が拒否するときには?
- エアコンの風が苦手なら、それ以外の熱中症対策をとり入れる
- 電気代が気になっているようなら、エアコンでかかる具体的な電気代を示す
- アラーム付きの熱中症計を利用する
- 「エアコンを使うようになったことで体調がよくなった」といった事例を伝える
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫