認知症とともにあるウェブメディア

副業ヘルパー

初めて足を踏み入れた介護の仕事場 3つの事業所の面接で知ったこと

「洗濯」はヘルパーの主な業務のひとつ
「洗濯」はヘルパーの主な業務のひとつ

新卒で入社した出版社で、書籍の編集者一筋25年。12万部のベストセラーとなった『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子)などを手がけた編集者が、40代半ばを目前にして、副業として訪問介護のヘルパーを始めることを決意しました。働き始めるために必須とされたの「介護職員初任者研修」を1カ月の自宅学習期間と10回のスクーリングを経て、無事修了。今回はヘルパーとしての仕事探しのために3カ所の事業所で面接を受けたお話です。

なぜ事業所内に介護ベッドが…?

求人サイトを通じて、3つの訪問介護の事業所に応募。いずれからもすぐにリアクションがあり、早速面接を受けることになりました。
最初に受けたのは、T事業所。小さなビルの2階にありました。窓には事業所名と「ヘルパーさん募集」の文字が大きく出ていますが、外からは中の様子をうかがい知ることはできませんでした。
採用面接なんて、学生時代の就活以来です。ちょっと緊張します。
中に入ると、意外に奥行きのあるフロア。奥にはPCの載ったデスクがずらりと並び、反対側の窓際には介護ベッドや大人用おむつ、車椅子などが置かれていたのが印象的でした。
ヘルパーは利用者宅で介護をするのに、なぜ事業所内に介護ベッドが…? 後で、面接をしてくれた職員さんに聞いたところによると、これはヘルパーさんの研修に使うものなのだそうです。なるほど、そうなのか。奥のデスクは、職員さんエリアとのこと。私が面接に通されたのは、テーブル上にお菓子が置かれ、ウォーターサーバーも設置されているスペースでした。ここは、ヘルパーさんがサービスの合間に立ち寄る休憩場所として使われている場所とのことでした。
訪問介護の事業所とは、こんなふうになっているのですね。事業所内部に入るのは初めてなので、ひとつひとつが新鮮でした。

ヘルパーの休憩タイムにお菓子は欠かせない…?
ヘルパーの休憩タイムにお菓子は欠かせない…?

認知症の利用者さんが大多数、身体介護が多いT事業所

面接ではまず、事業所についての説明がありました。
ある大企業のグループ会社が運営する訪問介護事業で、首都圏に40カ所以上の事業所を展開しているそう。こちらの事業所は、この地域では規模の大きい方だそうで、利用者さんは130人ほど、登録ヘルパーさんは30人近くいるとのことでした。
利用者さんの特性を尋ねると、「要介護度は3が平均で、認知症の方が大多数ですね」との回答。そうなのか、やはり介護が必要な方は認知症の割合が高いのですね。国の調査でも、要介護になる原因の1位は認知症となっているので、うなずけます。
また、サービス内容としては、身体介護の割合が多いとのこと。要介護3は「日常生活全体に介助が必要」な、なかなか重めの介護度ですから、おむつ交換は仕事内容に入ってきそうです。初任者研修で習得したスキル、ぜひとも実地で発揮したいところ。

「本業が他にあるため、週1回の数時間しか働けませんが、それでもよろしいでしょうか」と、あらためて確認しましたが、「まったく問題ありません」とのこと。ホッとしました。ヘルパーさんは常に不足しているようで、早速「いつから勤務可能ですか」と言っていただけました。けれど、他にも面接を予定している事業所があるため、その旨をお伝えし、お返事は後日させてもらうことにしました。

身体介護より生活援助のほうが多いS事業所

次に面接を受けたのは、S事業所でした。
こちらも、首都圏で展開している事業所で、同系列に訪問介護の事業所が4カ所、デイサービスも9カ所あるとのことでした。
この事業所の利用者さんは40~50人、ヘルパーさん10人弱。先のT事業所の、3分の1ほどの規模感でしょうか。これくらいが、地元密着の事業所としては平均的なのかもしれません。
利用者さんは、T事業所と同様に、認知症の方が多いそうです。ただ、身体介護より生活援助のほうが多いとのこと。要介護度が低めなのでしょうか。事業所によって傾向が違うのですね。実際に聞いてみないとわからないことです。
S事業所でも、職員さんから「いつから来ていただけますか」と言われました。早々にシフト表を取り出そうとするのを、慌てて止め、他に面接を受けている事業所があることをお伝えしました。
T事業所もそうでしたが、面接→即採用という流れになっている様子。いかにヘルパー人材が不足しているかを、早速、実感しました。

小規模ながら障害福祉サービスも請け負うK事業所

最後に面接を受けたK事業所は、S事業所と同じくらいの規模で、利用者さんは約40人ほど、登録ヘルパーさんは8人ほどでした。ただ、展開する事業所は他に1つだけで、デイサービスなどの多角経営もしていません。訪問介護オンリー、“地元で長くやっています”という雰囲気。
利用者さんの特性は、先の2カ所とは違い、認知症の方はむしろ少ないとのこと。脳梗塞(こうそく)による麻痺(まひ)など、体に不自由のある方が多いそうです。
なぜ、同じ地域なのに、事業所によって違いが出るのでしょう。なんとなく得意・不得意のすみ分けができて、それに沿ってケアマネさんが「この利用者さんは、この事業所がいい」と割り当てているのか…。
S事業所で特徴的だったのは、高齢者介護だけでなく、障害者福祉サービスも請け負っていたことです。精神障害者の方の生活援助などにも、何軒か入っているそうです。T事業所やS事業所は高齢者専門でした。こうした主な利用者像もまた、事業所によって異なる点のようです。
初めて足を踏み入れた、リアルな介護の仕事場。知らないこと、勉強になる話ばかりでした。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア