認知症とともにあるウェブメディア

幸せケアプラン

あなたや親に合ったデイサービス 確認したい9つのポイント

「デイサービス」と「デイケア」

公的な介護サービスを利用する際に欠かせない「ケアプラン」。より適切なケアプランをつくるためには、どのような介護サービスがあるのかを知っておく必要があります。ケアタウン総合研究所代表で、ケアプラン評論家の高室成幸(しげゆき)さんが、解説します。今回は、「介護サービス~通所・お泊まり編~」です。

公的介護サービスのなかでも使い勝手がよく、事業所も豊富で人気なのが通所系サービスです。これはケアを提供してもらえる場所に、利用者が「通い」で利用するものです。「デイサービス(通所介護)」と「デイケア(通所リハビリテーション)」があります。デイケアの中には、歩いて通われる利用者の方もいるとか。でも、多くは送迎車付きなので安心です。いずれも週1回から5回まで利用が可能ですが、回数はケアマネジャーと相談して決めましょう。

そしてもう1つが「お泊まり」で利用するサービス。家族にとって急な出張や勤務シフトの変更、冠婚葬祭、さらに介護疲れでなんとか3日~1週間でも心と体を休めたいという時などに、お泊まり付きで利用できるのがショートステイ(短期入所生活介護)です。

「通いで利用できるサービス」はこんな人に最適です

自宅にずっといる大きなリスクは「巣ごもり」状態になりがちなことです。ただでさえ要介護になると外出がおっくうになり、人と会話する機会も激減します。だからこそ、デイサービスやデイケアはとても貴重です。
デイサービスを利用される方の特徴は以下のとおりです。

  • 1人で住まわれている人
  • 日中1人になってしまう人(家族が仕事などで外出)
  • 家に閉じこもりがち・巣ごもりがちな人
  • 介護家族で身体とココロの負担感を軽減したい人

通いのサービスでは4つの効果が期待できます。
第1は、なにより大勢のみなさんと「交流」(これを社会参加といいます)ができ、おしゃべりができること。これは心のリフレッシュになります。
第2は昼食が食べられること(栄養補給)。孤食より「みんなでワイワイしながら」なので食欲も進みます。「お昼ごはんがウリ」の介護事業所も増えています。
第3が、お風呂! 自宅のお風呂は危険がいっぱいだし、家族の介助もひと苦労。デイサービスなら専門職の介助があり、要介護度が中重度でも、安心してきれいな体になれます(清潔の保持)。
第4がリハビリ効果のある体操やレクリエーションができること(心身の機能の維持・改善)。デイケアなら理学療法士や作業療法士が直接かかわってくれます。

デイサービス、デイケアの「魅力度チェック」で目利き力をアップ

ただ、人気のあるデイサービスが「あなた(または親、配偶者)に合ったサービス」を提供してくれるとは限りません。お気に入りポイント(魅力ポイント)は人それぞれ。今は、通いのサービスは群雄割拠の時代といえます。どの事業所も魅力的なサービスを提供するためにいろんな工夫をしています。一般的に、おしゃべり好きの女性陣はデイサービス、向上心が高い男性陣はリハビリができるデイケアを好む傾向があります。

次の「9つの魅力ポイント」をもとに本人目線・家族目線で「点数」をつけてみるのもよいでしょう。「○○のレクはワタシ的にはちょっとつまらない」「かかわり方の△△を改善してもらうと親は機嫌よく行ってくれる」など気になる点があれば、ガマンせずに事業所に提案するのも一案です。
あなたの提案を積極的に受けとめてくれるところは「利用者本位」のところと言ってよいでしょう。あなたの提案や意見が、魅力づくりに貢献することになります。
さあ、魅力ポイントをチェックしてみましょう。

①「多様な楽しみ」が用意されているか?

ここ数年、心身の機能改善をめざしたプログラムやレクリエーションだけでなく、認知症にも効果があるとされる心や感情にアプローチする音楽療法や園芸療法が人気です。さらにアートやクラフトなどもメニュー化され、利用者は「今日は○○を楽しむ」と選べるところもあります。季節に合わせた様々なイベントや行事などの楽しみも盛りだくさんです。
ユニークなところでは、利用者の特技や得意な趣味を指導者としてやってもらう事業所もあります。自己肯定感も生まれとても効果的です。

②医療的サポートと認知症ケアは個別的かどうか?

利用者はなんらかの病気を複数抱えていることが多いもの。急な体調変化や食事中の嚥下(飲み込み)トラブル、認知症などからくる不穏・不安な行動など、たくさんのリスクがあります。健康チェックと体調の急変時にどれだけ個別的な対応が可能か。デイケアでは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門スタッフが作るリハビリ・プログラムが、やる気が出るものになっているかどうかをチェックしましょう。
認知症ケアも脳トレだけでなく、遊戯具などを使ったケアや、本人の得意や趣味・関心に沿ったアクティビティー、料理などを盛り込んだ生活リハビリなど、どれだけ個別的で豊富なメニューが行われているか、も魅力を測るポイントです。

③利用者間の交流が活発であるか?

人とのかかわりが減りがちなので「人と交流する機会」はとても貴重です。利用者どうしがかかわり合い、「楽しいひととき」となるような仕かけ(工夫)があるかどうか、がポイントです。
どのような話題が好きか、どのような趣味に打ち込んできたのか、どのような人と知り合いになりたいか(相性)、などは大切な利用者情報です。積極的に事業所に伝えましょう。とくに認知症の方には、人との交流は認知機能の低下を遅らせる・改善させる効果が期待できます。具体的に伝えましょう。
また認知症の人を積極的に受け入れているデイサービスもあり、ケアマネジャーに情報提供を依頼しましょう。

④おいしい食事・工夫のある食事が提供されているか?

栄養バランスを考慮したおいしい食事が提供されることも大切です。加えて、利用者の健康状態や口腔(こうくう)の状態に合わせた介護食の提供も可能ならば良いでしょう。事業所ごとに地元の食材やなつかしい行事食、バイキング形式など工夫にあふれているのが食事です。食事体験をさせてもらうのもよいでしょう。
食材の好みや好きな味つけ、好きなメニューはもちろんのこと、苦手な食材や味つけ、メニューなども大切な情報です。体調上、禁忌の食材や調味料は、どのように配慮してもらえるか、相談しましょう。

⑤心地いい環境が配慮されているか?

一日を心地よく過ごすには環境やアメニティーは大切です。明るく清潔感のある室内はもちろんのこと、空間デザインや心地よい音楽、植物などに事業所のこだわりが見えます。
新築ではなくあえて地域になじんでいる「古民家を改造」(例:元酒蔵、元温泉宿、空き家)した「ザ・昭和」のデイサービスもあります。
どのような環境がしっくりくるか、体験してみましょう。

⑥利用者を「尊重するかかわり」が言葉づかいや態度でされているか?

「人として尊重するかかわり」ができるかどうか、は大きなポイントです。言葉づかい(例:幼児ことば、タメ口、上から目線)は要チェックです。押しつけ感のある明るさや元気さは高齢者にはつらい時も。おだやかな語り口、やわらかな表情、やさしいほほ笑みなどは「大切なかかわり」です。もし、そうしたかかわりを特定の人だけにしているようなら「えこひいき」が日常化しているのかもしれません。チェックをしておきたいところです。

⑦利用時間が選べるか?

デイサービス、デイケアは仕事をしている介護者の強い味方です。一般的な利用日の「1日の流れ」は以下のとおりです。

8:30〜お迎え 9:00〜到着・健康チェック 10:00〜朝のレクリエーション 10:30〜入浴・機能訓練 12:00〜昼食 13:00〜自由時間 13:30〜午後のレクリエーション 15:00〜おやつ 16:00〜施設出発 16:30〜自宅到着

しかし働いている家族にとっては利用時間に融通がきくかは、仕事と介護の両立支援としても大切なポイントです。家族の帰宅が遅いのならば、夜間延長OKのデイサービスや宿泊OKのお泊まりデイサービス(小規模:地域密着型)もあるので選択肢に入れてみるものいいでしょう。

⑧送迎時間がどのくらいか、送迎時間に融通がきくか?

利用者の送迎はワンボックスタイプが多く、送迎ルートもさまざま。いかに安全に効率的に送迎できるか、ということに事業所は苦心しています。送迎時間の短縮だけでなく、移動時間中のリスク(例:乗車中の体調急変、交通事故、渋滞対応)を減らすためにどのような対策を取っているのかも重要なポイントです。
ドライバーの運転レベルも気になるところ。安全講習の有無やドライバー歴、2種免許の有無などもチェックしたいところです。

⑨家族介護のお悩み相談や介護ノウハウの指導があるか?

利用者が通所系サービスへ行っている以外の時間帯の介護を担っているのは家族です。しかし専門的な技術指導を受ける機会がないまま介護に突入している人も多く、「自己流(我流)介護」になりがちです。ていねいさに欠けたり、力まかせだったり、ついつい乱暴な口調になったり…。ムリな姿勢でやって足腰を痛めると、さらなるストレスをためることになりかねません。
介助ノウハウ(例:移乗、入浴、移動)の相談に乗ってくれるか、個別のノウハウ(例:食事介助、入浴介助)を教えてもらえるか、も事業所を選ぶポイントにしましょう。

「お泊まり(短期入所生活介護)」は持続可能な在宅介護の強力な助っ人

ショートステイ

デイサービスやデイケアに「お泊まり」がついたのが「短期入所生活介護」(通称:ショートステイ)と考えるとわかりやすいでしょう。
利用は1泊2日~29泊30日まで可能ですが、早めの予約が必要です。施設併設型と単独型があります。メリットは朝・夕の送迎がない上に、朝食・夕食も提供してもらえ、夜間のケアまで頼めるので、家族の介護負担はグッと減ります。レスパイト(小休止)ケアは在宅介護を続けるために「強力な助っ人」です。
魅力ポイントの評価点は、デイサービス・デイケアと共通しますが、加えたい点が2つあります。

①予約は取りやすいかどうか?

ショートステイは人気のサービスなので「急な利用」には対応できないことがあります。いつ・どの時点で予約したらよいか、は要チェックです。ショートステイに応じてくれる事業所を複数ストックしておきましょう。

②利用者間の関係づくり、緊急時と夜間の対応はどうか?

デイサービスやデイケアでは「顔なじみ」も作りやすい。でもショートステイは「初対面」同士になりがちなので、関係づくりへの配慮が重要です。そして初めての環境はストレス過多となり、認知症の人の場合は不穏な行動が表れるなどします。緊急時と夜間の対応もポイントとしてチェックしましょう。

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア