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五十路娘 母の住まい探しに迷走中!

母の老後の費用負担 兄姉に理解得られず悩む中、現れた救世主とは

「お義兄さんそれは・・・」夫が話してくれたことで交渉成立 夫よありがとう

いつかはやってくると思いつつ、ついつい先送りしてしまう親の介護の準備。関西在住のイラストレーター&ライターのあま子さんもそんな一人。これまで一人暮らしを続けていた母が、2022年正月早々に転倒し、骨折→入院という経緯で認知症を発症。姉と兄による“介護押しつけバトル”を経て、いったん母は首都圏に住む兄一家のところで暮らすことになったのですが、あっという間に関西に戻ってくることになりました。再び、母の住まい探しが始まりました。今回見学したのは、小規模多機能型居宅介護が併設されたサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。

早いもので、この連載が始まって約1年がたちます。読んでくださっている方から「お母さんの住まい、まだ見つからないの?」と心配していただくことが増えました。芸人の決め台詞(ぜりふ)風に言うと「安心してください、入ってますよ」。話の中ではいまだ迷走していますが、現実世界では、よいホームが見つかり、母は穏やかに暮らしています。
ただ、そこにいたるまでは本当に紆余(うよ)曲折があって、「こんなマンガみたいなことある?」というような大どんでん返しもありました。「親の終の住まい探し」は初めての連続。戸惑い、空回り、迷走しまくった私の体験が、これから親の住まいを探す人にとって、暗闇を照らす小さな明かりになればうれしいです。

親の介護に避けて通れないお金の話

さて、今回は、母の住まい探しにあたり、私が一番つらかったことをお話しします。それは、ズバリ「姉兄とのお金の話」。
母から銀行や郵便局の通帳記帳を頼まれることの多かった私は、母のおおよその貯金額を把握していました。私が中学生の時に父が亡くなって以降、女手一つで3人の子を育て、大学や専門学校に通わせた母。蓄えがわずかなのは無理のないことと私は思っています。介護費用は、本人のお金でまかなうのが原則ですが、母の場合、年金と貯金の取り崩しだけでまかなうのは難しい。そうした現実を知ってもらおうと、まずは、母の貯金額を姉兄に知らせることにしました。

よく介護の本なんかに書いてあるじゃないですか。『介護に直接関わらない兄弟は、お金を多めに出すなどして、兄弟間に不平等のないようにしましょう』って。
◎理想→「お母ちゃんの世話はあま子(私のこと)がキーパーソンでやってくれるんやから、私らは多めに援助するよ」と姉兄から申し出てくれる。
▼現実→姉兄それぞれに、支援をお願いするが、双方から断られる。

登場人物【あま子】アラフィフのライター&イラストレーター。関西で夫と2人暮らし。優柔不断な性格。【母さん】91歳。要介護3。娘2人の世話で1人暮らしをしていたが…性格はマイペース。【カン太】あま子の夫。突然の施設探しに右往左往するあま子のよき協力者。【カラ美】あま子の6歳上の姉。気の強いしっかり者。兄とは犬猿の仲。3児の母。【ツヨシ】あま子の3歳上の兄。首都圏在住。小さいころからオレ様気質。3児の父。※年齢は施設探しを始めた2022年当時のもの
登場人物

姉兄との話し合いで、キレそうになったことは何度かありました。でもガマンした。“戦争”をおこすのは簡単だけど、目的を果たすには粘り強い“外交”が大切だと、これまでの経験で学んでいたからです。

兄との交渉が成功した理由は、夫の存在でした。交渉の場に夫が参加することで、いつも頭ごなしに会話をぶち切る兄が、比較的冷静な態度で話し合いに応じたのです。私からだと聞く耳をもたない提案も、夫が代わりに話してくれたことで、受け入れてもらえました。夫よ、本当にありがとう。
一方、姉はと言うと「ツヨシ(兄)に出してもらえ」の一点張りでした。母がマンション暮らしをしている頃は、近くで暮らす姉と私で世話をしており、首都圏に住む兄はほぼノータッチ。なので、姉の気持ちもわかるのです。正直、姉からの援助はあきらめていました。

ある日のことです。私が母のマンションで、家じまいの片づけをしていたところへ、姉がやってきました。お茶を飲みながら、母の荷物の処分に困っていることや、住まい探しが難航していること、母の現状などを話しました。すると姉が唐突に「母の支援をしてもよい」と言い出したのです。兄や母に思うところはあるものの、妹の私にすべてを負わせるのは不憫(ふびん)だと思ってくれたのかもしれません。こうして介護費用の不足分は3人で分担することが決定し、私は心底ホッとしたのでした。

住んだら元気になれそう健康系(?)サ高住

母が住んでいたマンションから徒歩約10分の距離にあるサービス付き高齢者住宅(サ高住)を見学しました。交通や買い物に便利な立地で、社会福祉法人が経営しています。

見学11:2023年1月 A市のサ高住

<施設情報>
●1カ月の料金:家賃、共益費(水道光熱費込み)、食費、管理費あわせて約20万円
別途、敷金家賃3カ月分、介護保険利用料、生活支援サービス費、電気代、医療費、生活消耗品代など
●部屋:個室23m²~ キッチン・洗面台・収納スペース・エアコン・緊急通報装置(ナースコール)
●食事:施設で調理
●人員配置:夜間1人
●特徴:居宅介護支援事業所、リハビリデイサービスセンター、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション併設。定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス

さしずめ健康系やな『サ高住っていろんなタイプがあるなぁ』

5階建てのビルの、3階から5階部分がサ高住になっています。1階は食料品を売るお店が入っていて、2回ほど買い物したこともあるのですが、階上が高齢者施設とはまったく気づきませんでした。部屋数は約50室です。案内は40代前後の元気な男性がしてくださいました。
まず、びっくりしたのは、入り口すぐにガラス張りのリハビリデイサービスセンターがあって、多くのお年寄りが元気にフィットネスをしていたこと。なかにはマシンを使っている人もいます。通路を行き来するスタッフもたくさんいて、これまで見学したホームとは活気がちがいます。こんなところだと母も元気に暮らせそう。
通路を進んで住居スペースに入ると、一転して静かで落ち着いた雰囲気です。見学させてもらった部屋は、これまで見たどこよりも広々として、暮らしやすそうでした。食事には、地元の食材をふんだんに取り入れるなどの工夫もしているとのこと。うん、ますますいい感じです。
介護については、この施設オリジナルの「定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービス」に申し込めば、デイサービスも含め24時間365日切れ目なく支援があるとのこと。それって前回の小規模多機能型居宅介護併設サ高住のサービスと似ているなと思ったら、こちらも同様に定額制でした。サービスを使っても、使わなくても決められた料金を払う必要があります。さらに、薬の保管に約3000円、金銭の建て替えに月1000円、保険証の預かりに約300円など、細々と加算される感じでした。いいと思ったホームは、やはり金額もそれなりにするなあ。とりあえず、「家族に相談します」と伝えて見学を終えたのでした。

【感想&後日談】

 施設見学を終えた夜のことです。料金は高いけど、あそこなら母もなじみの場所だし、毎日体も動かせるしいいかも♪とウキウキしているところへ、姉からLINEがきました。援助を減額すると非情の通達。ええっーーーっ!!! 子どもの学費が理由でした。もちろん、自分たちの生活が優先ですから否やはありません。こうして、やっと見つけた理想の住まいは一瞬の夢と消えたのでした。
私が母の介護を通じて学んだことは、「老後資金は想像以上に必要」ということです。ネットなどでは「90歳までに必要な金額」を想定していることが多いのですが、いまや女性の半数近くが90歳を迎える時代。今年で93歳になる母も「こんなに長生きするとは思わなかった」と言っています。人生100年時代を生き抜くために、できる限りコツコツ働こうと思います。

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