悲しい、くやしい、ゆるせない 家族介護ゆえに生じる思いを抱きしめて
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![いがみ合うの親子のキツネ](http://p.potaufeu.asahi.com/64b4-p/picture/28518352/beb357fd451c0606b625192233e0d8d9.jpg)
私とそっくりのしわしわの顔が、
「訪問介護ヘルパーは優しいのに、
子どものあんたは冷たい」と言い放つ。
私だって、優しくしたい。
でもそうさせてくれないのは、あなたじゃないか!
介護が始まってから、早2年。
私たちの親子関係は冷え込むばかり。
すっかり、私は意地悪キツネのようになってしまった。
![枕に顔を押し付け叫ぶ人](http://p.potaufeu.asahi.com/0ac8-p/picture/28518356/cc30f8e3ae53cd6c1f2b6e8a29b1b9ef.jpg)
「ふざけんなっ!!」
部屋にこもってひとり、枕に顔を押し付けて叫んだ。
どうして私は、ヘルパーさんのように、
母に寄り添えないのだろう。
私が人として未熟だから?
技術がないから?
——ちがう、そうじゃない。
![洗濯物を干すひと](http://p.potaufeu.asahi.com/2dc5-p/picture/28518351/88b473f5103cf3ee2b549c8f71327aab.jpg)
うまく寄り添えないのも、
ままならない感情があふれるのも、
家族なんだから、当たり前。
思えばたまには、互いに笑顔も出るようになったじゃないか。
そうだ、私はよくやっているんだ。
家族の私にしかできない、濃い介護を。
介護する人が、介護される人の気持ちに寄り添うこと。
それは、介護スタッフと介護される人の関係においては、
基本の心がまえかもしれません。
けれどもし、家族間の介護であるなら、
相手の気持ちに寄り添うことは「基本」ではなく、
それこそ「目安」くらいにしておくことをおすすめします。
というのも、ベテランの介護スタッフでさえ、
「他人の家族には寄り添えても、自分の家族には、うまくいかない」と口にするのをよく聞きますし、
私も「異議なし!」と挙手したいくらいです。
それほどに、家族介護は誰にとっても難所。
だからこそ、介護者家族がいちばんに寄り添うべきなのは、ご自身の心なのです。
悲しい、くやしい、ゆるせない。
時にはそんな感情・言動になってしまうのも当然です。
そんな人間味あふれる自分を笑って許してあげられたら、
明日はもう少し肩のちからが抜けるかもしれません。
家族介護は、ご自身で大目につけた30点でも、
はたから見たら、とっくに百点満点なのですから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)