あなたに触れることでもらったもの 命の尊さが心とからだにしみいる瞬間
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
寝たきりで、言葉も発せなくなったあなた。
そんなあなたに会うのが、
私は怖かった。
人の最期の姿を目にする。
その恐怖で。
けれど、あなたに会った途端、
恐怖は消えた。
ただ、息づく体があった。
それはあなたの、血のぬくみ。
命のかがやき。
私があなたに、
触れることで、もらえたものは、
はかなくも、強い。
私の内に、いつまでも。
相手がもう、自分のことがわからない。
動けないし、話すこともできない。
さまざまな理由で、会いに行くのをちゅうちょする関係になってしまう人たちが、
私も年齢をかさねるごとに、増えてきました。
けれど、その方の近親者に呼ばれた時は、気負わずに足を運ぶようにしています。
なぜなら、行ってよかった、と思わなかったことが今まで一度もないからです。
言葉にできない、というのはずるい表現かもしれませんが、
心底、命の尊さが心とからだにしみいるのは、
家族と過ごした最期のときや、そういった方々とともにした時間です。
私もこんなふうに生きられたら、とそのたびに思います。
命の重みが感じられにくくなっている、と言われる現代。
そこに必要なのは、
人さまの命に触れさせてもらう時間なのかもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》