雨で外出が億劫になった私 友からの数分の電話が心を鮮やかにしてくれる
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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雨だから、今朝のウォーキングはやめて家にいよう。
それが数日、なんとなく続いて、
いつのまにか外出まで億劫(おっくう)になった。
外に出るのは、通院と買い物ぐらい。
そうしたら、しとしとしと、
気持ちまで落ち込んできちゃったの。
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そんなある日、
私のようすに気づいた友達から、
電話がくるようになった。
「今日は、起きれたの?」
「ぼちぼちね」
ほんの数分のやりとり。
正直あんまり話したくないけど、
ただ私の話にうなずき聞いてくれる友達に、
私はちょっとだけ生きかえる心地がした。
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また今日も、彼女から電話がきた。
「今日はどう?」
「ぼちぼちよ」
たわいのない話にうなずかれるたびに、
色をなくした私の心が、
鮮やかによみがえっていくよう。
——ぼちぼち、またウォーキングをはじめてみようかな。
「雨が続いて、毎朝のウォーキングを休みがちになった。
それから、なんだか外に出づらくなって、気持ちが落ち込んでしまったの」
最近、気分がすぐれなかったという人からお話を伺うと、
そのきっかけは、日常のささいなことでした。
思えば、うちの祖母が生前「なにがなんでも毎日歩くの」とかたくななまでに有言実行していたのは、
習慣から離れたときに、不意にやってくるかもしれない気持ちの落ち込みを、
極力、避けるためだったのかもしれません。
とはいえ誰だって時には、気持ちは揺らぐもの。
そんなとき改めて、
気の置けない人とのおしゃべりの大切さを思い知らされるのです。
もちろん、心療内科などを頼るのもひとつの手ですが、
ほんのり心が落ち込むときは、
相手にただ話を頷いて聞いてもらうだけで、
いつのまにか癒えていくことも、しばしばあります。
それは言うなれば、人薬(ひとぐすり)。
効果てきめんで、副作用のない人薬に、
実は誰もがなれるなんて!
なんだか心の奥に温かなあかりが、
ぽっ、と灯(とも)る心地がしませんか?
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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