女学生のときからお気に入りの長い髪 白髪になってもこのままでいさせて
《介護福祉士でイラストレーターの、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![「髪、切ったら?」](http://p.potaufeu.asahi.com/822f-p/picture/28320436/f2d0a0ecca6d2e1424fa86400708b039.jpg)
「髪、切ったら?
シャンプーしてくれるヘルパーさんだって、
短いほうが楽なんだからね」
家族はしょっちゅう私に、そう勧めてくる。
でも私は、この長さがお気に入り。
女学生の頃からずっと、同じ長さなの。
![「ありがとう」](http://p.potaufeu.asahi.com/1c33-p/picture/28320434/90cb1d74b450d29bbec59b0d33ec2293.jpg)
まひがある私の手では、洗髪は難しく、
訪問介護ヘルパーさんに介助をお願いしている。
たしかに短い髪だったら、洗うのもずっと楽よね。
でもどうか、この長い髪のまま、
残りの日々を過ごさせてほしいの。
![髪の長い白髪の女性](http://p.potaufeu.asahi.com/ce93-p/picture/28320435/2ba8c5822eda19fd6cd6cc71a04e8910.jpg)
長い髪は、女の子の憧れ。
私の永遠の夢が、きらきら光ってるの。
白髪のおばあさんになった今でも、
ずっとずっと。
服装や髪形に、こだわりを持つ人は少なくありません。
しかし、介護を必要とする段階になると、
そのこだわりに対して周囲から不満があがることがあります。
「ひとりでボタンが留められないのだから、ワイシャツじゃなくて丸首のものを着たら?」
「ひとりでも整えやすいように、髪は短くしたら?」
毎日ご本人に関わる介護者であれば、そう提案して当然です。
ひとりでも困らないようにと、一緒に考えることも大切なわけですから。
けれどできるだけそこで、立ち止まりたいと思うのです。
なぜなら、服装や髪形に関するこだわりは、
その人の個性や、これまでの生活様式・人生観が深く関わっているからです。
つまり他者が強引に変えてしまっては、
ご本人のその人らしさ、生きる意欲まで奪いかねない繊細な部分なのです。
だから、
「お気に入りのボタンシャツは、もう難しいから」と、
違うデザインのものを勧める前に、
どうすれば同じものを着続けられるかを一緒に考えてみる。
そうして自分のこだわりを大切にされたご本人は、
老いてできないことが増えていくという寂しさよりも、
未来に生きる意欲が自然に湧くことでしょう。
髪形や服装のこだわりには、
その人らしさのヒントが豊かに隠れています。
だからこそ、そのこだわりを一緒に大切にしてみる。
その余裕が、幸せな介護につながるのかもしれません。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)