認知症とともにあるウェブメディア

お悩み相談室

ミスを機にデイ利用者に嫌われた 信用を取り戻すには【お悩み相談室】

食事介助を拒否する高齢女性、Getty Images
Getty Images

認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.デイサービスに勤務していますが、一度のミスを機に軽度の認知症の方から嫌われ、家族にも私に関する文句を言っているようです。この利用者に対応するときには同僚がフォローしてくれますが、それも申し訳ないですし、信用を取り戻すにはどうしたらいいでしょうか(20代・男性)

A.認知症が進んで重度になってくると、感情の記憶が残ることがあると言われています。相談者のことを誰だか認識できない、あるいはミスをされた出来事は覚えていないのに、そのときの嫌な感情だけが強く残るのです。その理由としては、物事の記憶に関わる脳の「海馬」と感情を司る「扁桃体」が近い位置にあることが関係しています。扁桃体は特に怖さや不安といったネガティブな感情に大きく関わり、出来事をネガティブな感情と一緒に記憶することで、その場面や登場人物のことは忘れてしまっても、“誰か分からないけど何となくこの人は嫌だ”という感情が残ってしまうのです。

例えば、過去に「お風呂に入りたくない気持ちのときに、無理に洋服を脱がされた!」という体験があったとします。すると着脱室が嫌な場所として記憶され、今では何もされていないのに着脱室に入るとネガティブな記憶が想起され、興奮して嫌がる場合があるのです。

こうなると信用を取り戻すのは余計に難しくなりますから、軽度である今の段階で、信用を取り戻せるといいですね。気持ちを無関心から好きに変えるのは難しいことですが、嫌いから好きにひっくり返すのは意外と難しいことではありません。また、何となく嫌われたのではなく、ミスをしたという理由があるので、なおさらです。

信用を取り戻すためには、この利用者にできるだけ話しかけて、自分のことを知ってもらう努力をすることです。自分のことを嫌がられる方に話しかけるのは勇気がいるとは思いますが、意識するのは介護ではなく自分を知ってもらうことです。世間話から始めて、自分の身の上話や思い出話、将来の夢、好きなこと嫌いなことなど、自分を知ってもらえるようなテーマであれば何でも構いません。介助をするのは嫌がられると思うので引き続き同僚に対応してもらい、介助の必要がなく、対等にコミュニケーションが取れる場面で話しかけてほしいと思います。信用というのは、相手のことを知ってから、初めて生まれるものではないでしょうか。

話しかけても嫌そうな対応をされたら「そう言われると悲しいです」、もし話を聞いてもらえたら「うれしいです」というように、できるだけ感情を言葉にして伝えることをおすすめします。認知症の人に対しては感情を言葉にしたほうが伝わりやすく、共感を得られやすいのです。

同僚にフォローしてもらうのが申し訳ないとのことですが、実は1人嫌われているスタッフがいると他のスタッフはやりやすい面もあります。嫌いなスタッフ以外の介助であれば、喜んで受け入れるというのはよくあることだからです。

また、起きた一度のミスは何が原因なのか? 相手にどう捉えさせてしまったのか。私たち介護者が「そんなつもりじゃなかったのに」で終わらないように分析することはとても大切です。

人から嫌われるのはつらいことですが、この状況はコミュニケーションの取り方を見直すいい機会だと思います。自分がステップアップするチャンスだと捉えて、信用を取り戻す工夫をしてみてください。

【まとめ】勤務先のデイサービスで軽度認知症のある利用者に嫌われているときには?

  • 介助は同僚に任せ、それ以外の場面で自分を知ってもらうために話しかける
  • 感情を言葉にして伝えると共感を得やすい
  • コミュニケーションの取り方を見直すいい機会だと捉える

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症とともにあるウェブメディア