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もの忘れを指摘すると怒る夫 外出もせず認知症が心配【お悩み相談室】

散歩をする高齢の夫婦、Getty Images
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認知症介護指導者の中島健さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.ここ数年、夫(79歳)のもの忘れが多くなり、指摘するとすぐに怒ります。このままだと認知症になるのではないかと心配で、ウォーキングに誘ったり、人と会うことをすすめたりするのですが、ほとんど出かけてくれません。2人暮らしなので、私が今後介護することになるかもしれないと思うと不安です(70代・女性)

A.認知症にならないために、ウォーキングをしたり、人と会ったりすることは大事なことなので、そこまで考えて夫に提案できる相談者はすごいと思います。ただ、「認知症にならない」という目的のためだけに夫が行動を起こすのは、難しいのではないでしょうか。それよりも生活の中で別の目的を見つけて、声をかけるほうがいいかもしれません。

例えば、「一人でウォーキングをするのは怖いから、一緒についてきてくれない?」「スーパーに行きたいのだけど、荷物が重いから一緒に行ってくれない?」というように、明確な目的をもって声をかけると、夫も付き合うのではないでしょうか。人と会うことについても、夫の趣味に関連する地域のイベントなどを見つけてきて、「認知症」という言葉は出さずに誘ってみると、乗り気になるかもしれません。

もの忘れについては、指摘をしても本人は不安になるだけですし、指摘されるのが怖くて夫はしゃべらなくなってしまう可能性があります。もの忘れがあっても軽く受け流して「私もこの間こんなミスをしちゃった。お互いに年とったね」というように、もの忘れを笑い合えるくらいだといいですね。夫は80歳に近いですし、加齢によるもの忘れは、誰にでもあります。単なるもの忘れではなく、ごはんを食べたことやお風呂に入ったことなど、体験したことを忘れてしまっているようなら、確かに認知症が心配なので専門医を受診することをおすすめします。

先日地域に住む80代後半の女性から「草むしりで使った鎌をどこにしまったのかわからなくなってしまった。危ないものをどこにしまったか忘れるなんて認知症の始まりではないか」と相談されました。そこで「その鎌が冷蔵庫から出てきたら、もう一回相談してください」とお伝えしました。草むしりをしたという体験全体を忘れたわけではなく、その一部である鎌をしまった場所を忘れただけなので、加齢によるもの忘れだと考えられます。こうした相談は多いのですが「通常のもの忘れから認知症に進行するということはないので大丈夫ですよ」とお伝えしています。

認知症になってもならなくても、今後夫婦のどちらかに介護が必要になる可能性は十分にあります。2人暮らしということなので、予防と同時に地域に頼れる場所をつくっておくことも大事です。

【まとめ】もの忘れが多く指摘するとすぐに怒る夫。認知症予防のためにとウォーキングや人と会うことを促してもほとんど出かけないときには?

  • 認知症予防のためではなく、生活の中での外に出る目的をつくる
  • もの忘れがあっても指摘せず、軽く受け流す
  • 体験したこと自体を忘れるようなことが続けば、一度専門医を受診する

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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