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もしや夫は認知症?娘に相談しても取り合ってくれない【お悩み相談室】

顔をそむけ合う母と娘、Getty Images
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東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.夫(78歳)のもの忘れがひどく、バスに忘れ物をしたり公園の掃除当番や病院の予約を忘れたりします。娘(47歳)に相談すると「誰でもそれくらいのミスはする」と取り合ってくれないばかりか、「お父さんを責めないで」と叱られました。認知症になったら介護するのは私なのでこの先心配です(74歳・女性)

A.一緒に暮らしている家族と、離れて暮らしている家族との間でギャップが生まれることはよくあります。たまに会うだけの家族に対しては、本人が取り繕ったり多少の緊張感をもって接したりするので、しっかりしているように見えるのです。しかし、一緒に暮らす相談者は夫のもの忘れをフォローしなければなりませんし、それによって誰かに迷惑をかけたら本人の代わりに謝らないといけない場面もあるかもしれません。かつての夫の姿と比較して、落ち込むこともあるでしょう。そんな日々がつらくて相談したのに、追い打ちをかけるように娘に叱られたら、やるせないですよね。

ただ、娘の立場から考えると、父のミスを母から聞かされて「お母さんがお父さんの悪口を言っている。お父さんがかわいそう」と思ってしまうのは自然なことだと思います。母が責めることで父が余計に混乱し、さらなるミスを招いていると考えて、叱るような言葉になったのかもしれません。

そこで夫のミスを娘に相談するというよりも、率直に夫のことで相談者自身がストレスを感じて苦しんでいて、娘に助けてほしいのだということを伝えるのはいかがでしょうか。そんなふうに頼られれば、娘も応じてくれると思います。

そのうえで娘も一緒に病院に付き添ってもらって、夫が認知症かどうかということを診断してもらうといいですね。脳にどのような変化が起きていて、どのタイプの認知症なのかということを医学的に診断してもらうと娘も現状を受け止められるはずです。そこからは家族の協力態勢が不可欠です。相談者だけが介護するのではなく、介護保険サービスを利用して娘も含めたチームをつくり、夫を支えていくことが大事です。相談者としては娘に迷惑をかけたくないと思うかもしれませんが、相談者だけに負担がかかって体調を崩すようなことがあると結局、娘にも負担がかかることになりますから、早めに協力し合える態勢をつくっておくことをおすすめします。

もちろん診断の結果、認知症ではない可能性もありますが、だからといって相談者のストレスがなくなるわけではありません。娘に話を聞いてもらうだけで気持ちがラクになることもあると思うので、素直にご自身の気持ちを伝えられるようになるといいですね。

【まとめ】夫のもの忘れを娘に相談したら、取り合ってくれないばかりか「お父さんを責めないで」と叱られたときには?

  • 娘は母が父の悪口を言っているだけのように感じたのかもしれないので、自分自身の率直な気持ちを話して、助けを求める。
  • 娘にも付き添ってもらい、夫が認知症かどうかを診断してもらう
  • 家族でチームとなり、夫を支えていく

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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