「なぜ結婚しない」「やせた方が…」セクハラ発言の利用者が嫌い【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.デイサービスに勤務しているのですが、利用者の中に嫌いな認知症の男性(81歳)がいます。「なぜ結婚していないのか」「もっとやせたほうがかわいい」などセクハラ発言が多く、先輩からは「認知症だから仕方ない」と言われますが、顔を見るだけで憂うつです(29歳・女性)
A.相談者は「利用者の男性を嫌い」ということを自覚しているところがいいなと思いました。この仕事は「利用者のことを嫌いになってはいけない」「利用者のことを感情的に区別してはいけない」と思われがちです。そのため、たとえ嫌いでもそれを口に出しにくい職場の雰囲気になっている場合があります。しかし、大事なのは嫌いだということを自覚したうえで、冷静にその嫌いな利用者とどのように接するのかを考えることです。無理に利用者のいいところを見つけようとしても、ストレスがたまるだけです。
まずは上司に相談して、職場全体の問題として捉えてもらうべきことだと思います。できれば、セクハラ発言が理由で利用者を嫌いなこと、顔を見るものつらいことを職場で共有してもらえるといいですね。セクハラ発言をされたときは同僚に対応を代わってもらったり、フォローの言葉をかけてもらったりするだけで、周囲に守られているような感じがしてストレスは減るのではないかと思います。
「認知症だから仕方ない」と先輩が言うように、確かに認知症だからこうした発言をしてしまうという可能性もあります。脳の理性を司る部分の機能が低下すると、思ったことがすぐに言葉に出てしまったり、性的な面も含めて欲求を抑えられなくなったりします。認知症になる前は、こうしたデリカシーのない発言はしない人だったかもしれません。以前はどういう人だったのか、どんな仕事をしていたのかということを家族にリサーチすると、発言の捉え方も変わるのではないでしょうか。
とはいえ、相手が認知症だから我慢しなければならない、ということではありません。私自身もデイサービスのスタッフとして働いているので、以前は嫌いな利用者がいたこともありました。そんなときは利用者とスタッフの関係性というよりも対等な立場で、失礼にならない範囲で注意すべきことは伝えていました。その様子が、周囲のスタッフからは逆に仲がよさそうに見えたようです。ただ、この方法は人との距離の取り方や関係性によって難しい場合も多いと思います。まずは周囲にフォローしてもらうことをおすすめします。
【まとめ】セクハラ発言が多く、顔を見るだけで憂うつになる利用者がいるときには?
- 上司に相談して職場全体の問題として捉えてもらう。
- セクハラ発言が理由で利用者を嫌いなこと、顔を見るのも憂うつなことをスタッフの間で共有してもらう
- 認知症になる前の利用者の性格や仕事について家族にリサーチする
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫