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最近デイに行きたがらない義母 無理にでも行かせるべき?【お悩み相談室】

支えられて歩く高齢女性、Getty Images
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東京都認知症介護指導者でデイサービススタッフの坂本孝輔さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.同居している義母(84歳)は認知症があり、1年ほど前からデイサービスに通っています。最近行きたがらず、私は在宅仕事なので無理には行かせていないのですが、夫は「休み癖がつくと大変だから、無理にでも行かせたほうがいい」と言うのです。休み癖がつくと確かに困ります(51歳・女性)

A.休み癖というのは確かにあるかもしれませんが、無理して行くことのストレスなどを考えると、BPSD(行動・心理症状)が悪化するなど、悪影響のほうが大きいと思います。とはいえ、家族としては行ってほしいと思いますので、どうすれば行ってもらえるのかを模索する必要があります。

デイサービスに行きたくない理由として、通っているデイサービスのレクリエーションや雰囲気などが本人に合わない場合などもありますが、1年通っているのであれば、その可能性は低いかもしれません。行きたくないと感じるような出来事があったかもしれないので、まずは担当のケアマネジャーを通じて、デイサービスのスタッフに相談することをおすすめします。相談を受けたデイサービス側は、お義母さんが休みがちになったころより少し前にさかのぼって、スタッフや他の利用者とのやり取りの中で、原因がなかったかどうかを探ります。スタッフのちょっとした言動で傷ついてしまった、新しい利用者が増えてスタッフの目がそちらに集中して自分の存在を軽んじられたような気持ちになって不満を感じている、認知症が進んでこれまでのように活躍できず居場所がない……などさまざまな原因が考えられます。

原因がわかれば対策も考えやすいのですが、実は明確な原因を突き止められないケースも少なくありません。デイサービスでの人間関係が問題であれば、曜日や時間帯を変えてみるだけでスムーズに行けるようになることもあります。また、特にコミュニケーションがよく取れているスタッフがいれば、そのスタッフに家まで迎えに来てもらったり、本人が好きそうなイベントがあれば誘いにきてもらったりするのも効果的だと思います。デイサービスに行くこと自体は乗り気ではなくても、この人に誘われたら行ってもいいかなと思えることはあるのではないでしょうか。デイサービスの協力が不可欠なやり方ではありますが、相談してみるといいと思います。

ここで、不都合な真実を一つ伝えておきたいと思います。それはデイサービスの担当者も完璧な人間ではないということです。仮にデイサービスの対応に何らかの問題があったとして、施設側が認めないこともあるでしょう。または、自分たちの問題をしっかりと自覚できない場合もあるものです。そんなとき、うまくコミュニケーションが取れずに、こじれてしまうかもしれません。そうならないためにも、必ずケアマネジャーを伴って相談するのが大切です。ケアマネジャーは双方の情報や言い分を総合的に聞いて、客観的に分析する役割があります。もちろんケアマネジャーも完璧とは限らないのですが、「プロの言うことだから」と鵜呑(うの)みにする必要はありません。どうしても相いれない場合は、デイサービスもケアマネジャーも変更することは可能です。そんなときは地域包括支援センターが相談に乗ってくれるでしょう。

私が勤務するデイサービスでも、以前利用者さんの自宅に迎えに行ったら行きたくないと拒否されることがありました。そこで何とか連れて行っても次回以降ますます拒否されることになるので、無理には連れて行きません。その際に意識しているのは、困った表情やがっかりした表情を見せないということです。笑顔で「次に来てくれたときにはこれをやりましょう」などと言って、なるべくいい印象を残して去るようにしています。

無理に行かせると、介護系の施設そのものをすべて拒否するようになってしまう可能性があり、今後ますます家族が大変になります。それは避けつつ、デイサービスのスタッフやケアマネジャーと一緒に、行く気になってもらう方法を見つけられるといいですね。

【まとめ】最近デイサービスを拒否する認知症の義母。休み癖がついたら困るときには?

  • 休み癖がつくことよりも無理に行かせることの悪影響のほうが大きいことを理解する
  • デイサービスのスタッフに相談し、拒否した日の1週間くらい前までさかのぼって、行きたくない原因を探ってもらう
  • 曜日や時間帯を変える、親しいスタッフから誘ってもらう、好きそうなイベントがあれば声をかけてもらうなどの対策をとってみる

 

 

≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫

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