父の涙
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
季節は秋を迎えてしまいましたが、この夏の父との出来事をみなさまと共有できればと思います。
執筆したまま、提出していなかった手元の原稿を見ると、7月1日に書いたものでした。
以下が、その内容です。
先日の夕方、受診の帰り道でのことです。
この日は、午後5時を過ぎても、かなり暑い日でした。
ふと目に留めると、父と同じくらいの高齢の方が、
人気も少ない中で、マスクをし、木陰で休んでいる…。
ちょっと気になり声をかけました。
「暑いですね、水分は持っていますか?」
するとご高齢の男性からは、
「買い物に行こうとしたけれど、少し頭が痛くて休んでいるんですよ」
わたしは、人通りも少なかったこともあり、マスクを外してはどうかとお声がけした後、近くのコンビニに急ぎました。
スポーツドリンクでも…と、思ったら、やはりこの急な暑さで売り切れ。
どうしようと思ったら、たまたま自販機がすぐ近くにありました。
すぐに、先ほどの高齢の方に届けて、少しずつ水分補給していただき、冷えたお茶はわきの下へ挟んでいただきました。
そうして休憩をしていただいているうちに、
「近くだから、今日は帰ろう」とおっしゃり、ご家族がいるご自宅へ戻っていかれました。
そんなことをしていたら、ふと近所に住んでいる高齢の父のことが気になり…。
慌てて電話をして、お夕飯や買い物をして、届けることを伝えました。
電話口の父からは
「大丈夫だよ、お前も忙しくて疲れているんだから」
「お父さんは大丈夫だからさ」
との返答。
でも、この日は、買い物をして、お弁当を購入し
先日作って冷凍していたハヤシライス、熱中症対策にと、梅干し、スポーツドリンクなどを届けました。
それらを父に渡したときでした…。
顔を覆いながら
「本当にありがとう、こんなにも急に暑かったから、怖かったよ…」
「こんなに暑くて頭がなんだか痛かったから不安だった」
と父が言うではありませんか。
そして、さらに思いもよらないことを…。
「ひとり長生きしてごめんな…」
そう言って涙を流していたのです。
〝ひとり長生きしてごめんな〟
そんな言葉を父に言わせてしまった、申し訳ない気持ちで父を直視出来ませんでした。
「何言ってんの〜、近くなんだから大丈夫、私こそごめんね」
帰り道に、わたしも込み上げてくる感情を
抑えられずに泣きました…。
近年の異常気象ともいえる暑さ、
そして毎年この時期になると、全国各地で発生する台風や豪雨による災害…。
自分自身や家族のことをいたわりつつも、
隣近所、周囲の方にも目を向けて気にかけることの大切さ。
父の涙からたくさんのことを感じ取ったのですが、
うまく言葉にできません…。
認知症のあるわたしは、当事者発信活動の合間に、高齢になった父に食事を作って届けたり、家事や子どものことなどをしたり…。
工夫しながらも、この冬の首の手術後の体調の影響で思うようにこなせない悔しさも感じています。
痛みから、時折、イライラしてしまう自分の感情をコントロールし、深呼吸し、身体を労わりつつ…。
いまのわたしにできることを、
いままで出来なかったことも時間をかけてでもやりたい。
そして、認知症があっても出来ることを続けていきたいです。