かけがえのない時間
こんにちは。
若年性認知症当事者のさとうみきです。
心地よい季節。
こんな「時間(とき)」だからこそ休日を満喫したい。
夫も休みだった、ある土曜日。
少し私の体調がすぐれないこともあり、
「後部座席で寝ているだけでいいよ」と、
そんな言葉を夫がかけてくれ、車内に乗り込みました。
後ろの座席で横になると、
気づいたときには、ウトウトと夢の中でした。
「到着したよ~!」
夫と甥(おい)の言葉に目が覚める。
しかし、そこがどこなのか全くわかりませんでした。
車を降り、振り向いた景色は、小さな岩場の多い海でした。
以前、連載で書かせていただいた、小田原の海とはまた違う景色が広がっていました。
波打ち際の岩場まで素足で降りたかのような感覚…。
まるで、子どものころを思い返すかのように全身がワクワクしていました。
小さな石をどかしては、カニを見つけて、はしゃいでいたかと思います。
一緒に出かけた甥が私に声をかける。
「足を滑らせるから危ないよ〜」
そんな言葉にも、耳を傾けられず
「落ちても大丈夫だよ~」
そんな言葉が出るほど、とにかく楽しみました。
そして、きゃっ!
片足を滑らせ、水の中にポチャン!!
それでも、不快にも感じず、笑っていた笑顔の動画が残っています。
時間を忘れて、夫と家族同然の甥と楽しみました。
「今度は(息子も加えて)4人で、来たいね」
一緒に来ることができなかった息子。
このような家族との時間が、とても尊く、かけがえのない時間だと、最近あらためて感じます。
夫は、帰りの車内でこんなふうに話をしていました。
「最近、いろんなことがあったから、笑顔が見られて、それだけで十分だよ!」
あたりまえのように思える夫の言葉ですが、
私が笑顔でいられることは、家族にとっては笑顔の連鎖がつながることになるのです。
そして
認知症があるなし関係なく
お互いに明日へのエネルギーチャージになっているのです。
この日の2週間ほど前に、私は体調崩して、救急外来を受診したことがありました。
あきらめかけていた瞬間があったこと
あきらめたくない時間があったこと
私だけでなく、きっと、みんなそんなふうに葛藤しながら生きているのだと思います。