明日へのパワー
こんにちは。
若年性認知症当事者のさとうみきです。
夏のような日差しが続く、5月半ば。
とても心があたたまる出来事がありました。
以前にも連載で書かせていただいた、かかりつけの歯科クリニックのこと。
久しぶりに訪れた歯科クリニック。
変わらず、先生や皆さんが心地よく迎えてくださいました。
なんとなく空間の認識のズレから、
時折、普通の椅子ではない美容室や歯科などの椅子に座る感覚がつかめない時があります。
それでも、理解ある皆さまは、
いつも変わらない笑顔で接してくださいます。
こうした対応は、当たり前のことのように感じるかもしれませんが、
私たちは、認知症と診断を受けてから、認知症患者としてしか診ていただけない状況も、
残念なことにしばしばあります。
1年ほど前だったでしょうか…。
若年性認知症のお母さまをご自宅で介護されている友人から、
「訪問歯科ではなかなか難しい治療があるのだけれど」とのご相談がありました。
その時に、私のかかりつけの歯科クリニックの先生、スタッフにご相談させていただき、
診察をしていただくことができました。
そしてつい先日
私が講演会のための移動途中の車内で、その友人から1通のLINEが届きました。
以下、許可をいただき一部変更し掲載させていただきます。
1度は訪問歯科では難しいと断られてしまったけれど…
どんなに歯磨きを頑張っても、
どんどん虫歯が進行していくのがかなり辛かった。
こうして治療してもらえると、
私の心も折れずに歯磨きまた頑張れます。
理解あるクリニックを紹介していただき、ありがとうございました。
ご家族も本人とともに、もちろん頑張っているのです。
本人の頑張りとともに、ご家族にとっても、医療であきらめずに診てもらえることのうれしさは、
次へのパワーチャージになるのです。
多くの人にとっては、当たり前のように感じるようなことに対しても、
まだまだ、仲間たちからも悲しい声が聞こえてくることもあります。
この連載を読んでいただき、
皆さんがどう感じるか…。
そして、認知症を「自分ごと」として考えていただけるきっかけになればうれしく思います。
認知症の私たちは、そのときの状況などに応じて、通院、治療が難しいケースはございます。
それでも、本人も家族も、できるならば、医療を継続し、あきらめない暮らしを続けたいという思いを持っているということを知っていいただければと思います。
そして、出会うときに「認知症患者」としてではなく、
目の前のひとりの人として出会っていただけたらうれしいです。