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コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

一夜で急変!母がコロナで長引く入院 好物のモンブランと帰りを待つ

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する“コマタエ”こと駒村多恵さんが、要介護5の実母との2人暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。母親の寝息に違和感を覚え、夜間救急へいくと、コロナに罹患していることが分かった前編「真夜中の違和感」、中編「コロナで入院」に続くお話です。

コロナで入院 その後

母のコロナ陽性という診断に驚愕したものの、少し冷静になった私は、次第に不幸中の幸いと思えてきました。母の体調に違和感を覚えたものの、真夜中、一人でなかなか判断がつかなかったところを、#7119(※)の看護師さん、救急隊員の方、医師、関わった方それぞれの適切な判断によって目立った症状が出る前に入院できて、24時間看護師さんの目の届くなかで過ごせる。これは母にとってベストだったのではないかと。看護師さんも、隔離期間が終われば即帰宅という見込みで話を進めていたし、次の週末には家に帰れるだろうと、私はやや明るい心持ちで自宅に戻りました。

※#7119:「救急安心センター事業」。救急車を呼んだ方がいいか、急いで病院を受診した方がいいかなど、相談にのってもらえる電話窓口。#7119以外の番号で救急電話相談等を行っている地域もあります。また、実施していない地域もあります。詳しくは、お住まいの自治体にご確認ください。

冷蔵庫を開けると、一緒に食べるつもりで買ってきた母の好物のモンブランとマンゴータルトがそのままになっていて、退院したら、またいつものように半分こして食べようと思いながら、すっかり乾燥したマロンクリームを口に入れ、一人で二つのケーキを平らげました。

モンブランケーキ、Getty Images
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翌日。病院へ、入院中に必要なものを持参しがてら様子を聞きに行きました。すると、看護師さんから思わぬ言葉が。
「実はお母様、入院してから熱が上がってきて、39度を超えたのでコロナの薬を投与しました。今は37.4度まで下がっていますが、酸素飽和度が80%台後半で、今2Lの酸素を投与しています。早期退院は難しいですね」
私は絶句しました。
一夜にして急変。どうしよう、いや、どうにもできない…。
それからも、母の病状は悪化の一途をたどり、肺炎も併発。痰の粘度も高く、2時間に一回は吸引しないと気道を塞ぐ恐れがでるまでになりました。数日前まで、隣で眠る母が夜中に咳をするたびに、起きて背中をトントンと叩いたりするのは眠いなと思っていましたが、今は何もしてあげられないことに歯がゆさを感じます。病院内で隔離され、一人でベッドに横たわる母は、心細く思っているでしょう。どうか持ちこたえておくれ…。

一週間が経っても回復の兆しは見えません。解熱剤を投与しているにもかかわらず38度以上の熱が続き、酸素飽和度も下がったまま。加えて、左右の肺に水がたまっていることもわかりました。
再び家に帰って来られるだろうか…。心がギュッと締めつけられました。

点滴、Getty Images
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膠着状態が続き、そろそろ三週間。今日も変動はないんだろうと期待する気持ちが薄らいできた頃。病状を問い合わせると、「酸素を投与せずとも90%台まで戻ってきました」とのこと。熱も下がり、急速に回復。血液検査で状態の改善も確認し、退院の許可が下りました。感染判明から約一カ月後のことでした。

肺炎に加えて胸水が溜まったと聞いた時は、もう会えないのではないかとどれほど心配したことか。もし退院できたとしても、酸素が欠かせないとなると、今までのようにデイサービスに通えなくなる可能性もあり、そうなれば、在宅介護は諦めねばならないと覚悟もしました。とはいえ、それでも希望は捨てず、戻ってくることを信じて、酸素が必要なら在宅でどんな準備が必要なのか調べていました。幸いなことに常備しなくても良い状態で戻ってくることができました。感染リスクを負いながら看護にあたって下さった病院スタッフの皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

久しぶりに会った母はふた回り小さくなっていました。病との激闘を思い、よく頑張ったと泣きそうになりました。その後、自宅に戻ってリハビリを進め、少しずつ回復。退院当初は持ち上げたときに軽く感じた母でしたが、最近は、移乗の度に「重いな」と心の声がでるほどになりました。が、その重さは生きているからこそ感じられる幸せな重み。断裂している自分の股関節を労わりながら(「まさかの大ケガ!痛たたた…リハビリしながら母の介護を乗り切る工夫」参照)、母の体温と重みをずっしり感じています。秋も深まってモンブランの季節。一緒に食べられるのは嬉しいけれど、ほどほどにしよう。

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