無年金で認知症の母の介護費 パート勤務の私には払いきれない【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
認知症地域支援推進員で介護支援専門員の田中リエ子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.同居している母(78歳)は認知症で、日中はデイサービスに通っています。母は無年金なので収入がなく、サービスを利用する費用は私のパート代から出しています。私も子どもが3人いてギリギリの生活ですし、これ以上は費用を負担したくありません(49歳・女性)
A.子育て世帯が親の介護費用も負担するというのは、大変なことだと思います。介護保険サービスでは自己負担は原則1割ですが、今後、認知症が進行してさらにサービスを増やしたり、施設に入居したりする可能性を考えると、不安なことと思います。
年金も貯蓄もない場合、生活保護を受給する方法もありますが、家族と同居している場合(同一世帯)、お母さんだけが生活保護を受けるのは難しくなります。
現在デイサービスに通っているとのことですが、介護保険サービスには、負担を軽減できる仕組みがあります。1つは「高額介護サービス費」といって、1カ月に支払った自己負担額が限度額を超えると、超えた分が払い戻される制度です。
・世帯内の誰かが住民税を課税されている場合 負担の上限(月額・世帯合計)44,400円
・世帯の全員が住民税非課税の場合 負担の上限(月額・世帯合計)24,600円
また、施設に入居する場合、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)などの介護保険施設であれば、食費や居住費の助成があります。食費や居住費は自費になりますが、年金などの所得に応じて負担限度額が設けられています。
今後どれくらいの介護費用がかかるのかがわからないと先が見えず不安になると思いますが、こうした制度を知っておくと安心材料の1つになるかもしれません。
また、無料のサービスを利用して、介護の負担を軽減するという方法もあります。例えば地域包括支援センターが開催している介護予防教室や認知症カフェへの参加です。週に1、2回こうした無料のサービスを利用すれば、デイサービスに通う日数を減らせるかもしれません。デイサービスのように送迎つきではありませんが、「チームオレンジ」(認知症サポーターなどによる支援チーム)が設置されている地域では、外出支援・同行支援などのボランティア活動を実施していることもあります。
お金のことは、他人に相談しづらいかもしれませんが、1人で抱え込むのはつらいものです。役所の生活援護課などでは、金銭面の相談に乗ってくれると思いますので、問い合わせてみるのもおすすめです。
【まとめ】無年金の母の介護費用を負担。これ以上は負担したくないときには?
- 介護保険サービスに関して、所得に応じて負担を軽減する制度を知っておく
- 地域包括支援センターなどが実施している無料のサービスを利用する
- 役所の生活援護課で相談する
≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました。≫