最近やる気が出ないのは、認知症? それとも……見過ごしがちな心の病
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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最近、私はなにもかもが、
めんどくさい。
身だしなみを整えるのも、
季節にそった、服を選ぶのも。
でも、もう年だもの。
よくあることでしょ?
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それに最近は、
人からの誘いも、友達とのおしゃべりも、
気がのらない。
ほうっておいてよ、ひとりが気楽。
この年だもの、人に気をつかいたくないの。
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年のせい、年のせい。
私のうつ病は、
私のなかに隠れがち。
うつ病かもしれない。
そんな可能性がある、高齢者の初診に付き添ったことがあります。
行き先は、心療内科。
ただ、ご本人は「絶対に周りに知られたくないから」ということで、
自宅から離れた病院を選んだ上で、わざわざタクシーで行きました。
緊張の面持ちだったその人も、受診後は一転、
「ほっとしたわ。誰でもうつ病になることがあるのね」と、
穏やかな笑顔になられたのが印象的でした。
生活習慣の乱れや、もの忘れ、人づきあいの減少など、
高齢者のうつ病は、認知症の症状と似ていることなどから、
「年のせい」という思いこみもあり、発見が遅れがちです。
そしてどうやら、高齢の方ほど、
心療内科や精神科はハードルが高いと、思われているようです。
そんな方には身近な人たちの、
「心療内科なら、今は誰だって行くものですよ」のひとことが、
ご本人の気持ちを、軽くする場合もあります。
うつ病は、寝たきりにつながることもある、早期発見が大切な病です。
高齢になれば、複数の診療科にお世話になるのが一般的です。
外科や内科や耳鼻科や整形外科……。
そんな選択のなかに、自然に、
心療内科もあったらいいなと思います。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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