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老人ホームから退去通告 家は売却済みで途方に暮れています【お悩み相談室】

入院患者と医師、Getty Images
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地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.父(82歳)は有料老人ホームに入居していますが、病気で常時医療行為が必要になり、退去を言い渡されました。終の棲家と考え、入居にあたって持ち家も売ってしまっているので困っています(50歳・女性)

A.突然退去を言い渡されて、本当にお困りで不満も大きいのではないかと思います。とはいえ、常時医療行為が必要になったことで、退居を言い渡されたということは、お父さんが入居しているホームには医師や看護師が常駐していなくて、医療面の対応ができないことが理由だと思います。その老人ホームに居続けたとしても、お父さんの安全面は確保されないわけですから、看護師が24時間常駐しているなど、常時医療行為に対応できる施設への転居を考えるほうがいいかと思います。

転居するとなると、費用面も気になるところではないでしょうか。持ち家を売ったお金をホームの入居の際に支払う「入居一時金」に充てていたとしたら、余計に気になりますよね。入居一時金は、一般的に10~30%は「初期償却」といって入居の際にホームに回収されて戻ってきませんが、残りの分は入居期間によっては返還されます。残りの入居一時金を使い切る期間は「償却期間」といって、ホームや入居者の年齢によって異なります。初期償却率や償却期間は入居の契約の際に受け取った書類に書いてあると思うので、確認してみてください。

転居先としては、介護保険を利用して入居できる介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)であれば費用を抑えられます。所得や預貯金などの条件によっては、介護保険施設でも自費となる住居費・食費が軽減される「介護保険負担額認定証」の交付が受けられるので、詳しくはお近くの地域包括支援センターや各市区町村の窓口にお問い合わせください。

常時医療行為が必要となると、長期的に医療や介護が必要な人のための施設である「介護医療院」が適していると思います。ただし、特別養護老人ホーム(特養)に比べると施設数が少ないので、近くにない場合もありますし、近くにあっても満室で入所できないこともあります。その場合は遠方で空きがある介護医療院にするか、常時医療行為に対応している有料老人ホームにするという選択肢もあります。

退居を言い渡されてショックだとは思いますが、気持ちを切り替えて、転居先選びに尽力したほうがお父さんのためにもなるのではないでしょうか。ケアマネジャーなどに相談して、お父さんも家族も安心できるような施設に転居できるといいですね。

【まとめ】常時医療行為が必要になり老人ホームから退去を言い渡された父。持ち家を売ってしまい、困っているときには?

  • 常時医療行為に対応できないホームにいてもお父さんの安全を確保できないので、気持ちを切り替えて転居先を探す
  • 老人ホームへの入居の際に支払ったお金は一部戻ってくる可能性があるので、契約書類に記載されている初期償却率や償却期間を確認する。
  • 転居先としては、介護保険を利用して入居できる介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院)であれば費用が抑えられる。

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