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モラハラ夫が要介護に 仕返しすら考える自分が怖い【お悩み相談室】

頭を抱えるひと、Getty Images
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地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.夫(79歳)が脳梗塞で倒れてまひが残り、介護が必要になりました。もうすぐリハビリ病院から退院してくるのですが、これまでさんざん夫のモラハラに苦しんできたので、介護をしたくありません。仕返しを考えている自分が怖いです(77歳・女性)

A.ご自身で「仕返しを考えている自分が怖い」と気づけてほかの人に相談できるのは、すばらしいことだと思います。モラハラに耐えなければならない立場から、介護する側になり、立場が逆転するような形になるわけですから、仕返しを考えてしまうのは正直な気持ちであり、考えられることではないでしょうか。そこをごまかして、介護している中で、やってあげているのに言うことを聞いてくれないイライラなどから、実際に手を上げてしまったといった事例は少なくありません。

自分のことをこれだけ客観視できて、事態を予想できているので、やるべきことはそれを防ぐための対策を立てることです。具体的にはほかの家族に助けてもらうほか、介護保険サービスを利用して、第三者に介護を任せるということになると思います。夫の身体状態から、どのような介助が必要になるのかということは、病院のリハビリ専門職などからの助言により、ある程度わかると思うので、自分ができることは何か、できないことは何かを明確にし、ケアマネジャーに伝えてください。それを踏まえたうえで、介護施設への入居を検討するのか、訪問サービスやデイサービスを利用しながら在宅で過ごすのか、デイサービスを利用するなら頻度はどのくらいにするのか、といったことをケアマネジャーが提案してくれます。食事の支度や洗濯ならできるけれど、食事や排泄(はいせつ)の介助はできない、などできるだけ具体的に伝えると、ケアマネジャーもケアプランを立てやすいと思います。

もちろんケアマネジャーとしては、夫本人の意向も大事にする必要があります。夫が「他人にケアされたくない」「施設には入りたくない」と言うこともあるかもしれません。とはいえ、相談者の気持ちを別にしても、まひが残っている夫のすべての介護を担うのは年齢的、体力的に限界があります。これまでの関係性を考えると、相談者から夫に伝えるのは難しいと思うので、ケアマネジャーやほかの家族に間に入ってもらうことをおすすめします。

今後ケアマネジャーだけではなく、医師や看護師、介護、リハビリの専門職など多職種で相談者夫婦を支えていくことになります。介護は一人でやれるものではありません。それぞれの専門によってできること、できないことはありますし、それはチームの一員でもある相談者も一緒です。やっていく中で状況は変わっていきますから、不安や心配なことも変わっていきます。

そのときにも一人で抱え込まずに、周りの人たちにその思いを伝えてくださいね。対応方法を考えながら、チームみんなで支えてくれるはずです。

【まとめ】脳梗塞で介護が必要になった夫。これまでモラハラに苦しめられてきたので、仕返ししてしまいそうなときには?

  • 仕返ししそうだと気づけているので、それを防ぐために介護保険サービスを利用して第三者に介護を任せるといった対策を立てる
  • 介護や世話に関して、できること、できないことを明確にし、それをもとにケアマネジャーにプランを組んでもらう
  • 夫に直接伝えることが難しいことがあれば、ケアマネジャーやそのほかの家族に間に入ってもらう

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