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独身、年金暮らし 認知症かも……と思うも受診できない【お悩み相談室】

診断を受けるひと、Getty Images
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地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.最近、かかりつけの眼科や歯医者の予約日を間違えて行ってしまったり、料理をするのにやたらと時間がかかってしまったり、認知症になったのではないかと不安です。病院に行くべきだと思いますが、独り身の年金暮らしで、もし診断されたらと思うと怖くて受診できません(70歳・女性)

A.認知症は早期発見、早期受診が理想的です。しかし「認知症=治らない病気」で、どんどん進行してわからない、できないことが増えていくというイメージが根強くあります。このため、受診して医師に事実として告げられることを考えたら、私でもやはり受け止められるのかと感じてしまいます。

受診して認知症かどうかを診断してもらうことは大事ですが、いきなり受診するのは確かにハードルが高いかもしれません。まずは、認知症について正しく理解することから始めてはいかがでしょうか。認知症になったら何もできなくなってしまう、といったイメージを持っていると、病気から目をそむけたくなりますよね。しかし、認知症になってもできることはたくさんありますし、最も多いアルツハイマー型認知症は一般的に進行がゆるやかです。認知症について正しく知ると、今までとは違った病気の捉え方ができるようになり、受診すべきかどうかの判断もつきやすくなると思います。

認知症について知るには、地域で開催されている認知症サポーター養成講座や自治体が主催する認知症に関する講演会などに参加するのがおすすめです。地域包括支援センター(地域包括)に行けば、こうした情報を教えてもらうことができます。また、地域包括には認知症の人や家族に対しての相談支援などを担当する「認知症地域支援推進員」が配置されていることもあり、今の不安をそのまま相談してもいいと思います。

私は地域包括で働いていますが、実際に認知症に対する不安を抱えている方が相談にくることがあります。例えば相談者のような悩みであれば、いきなり認知症についての話をするのではなく、独り身の人が活用できる制度や支援方法、どうすれば予約日を間違えなくてすむかなど、現在困っていることの解決策を具体的に提案します。一人で悩まずに身近に相談相手がいると感じていただけるように支援をして、その後も相談をしていただけるようにつないでいきます。すぐに解決できる問題ばかりではありませんが、一人で悩んでいると悪い方向に考えが向いていきます。予約日を間違えたり、料理に時間がかかったりするのは、認知症に限らず加齢によって起こりやすくなることでもあります。工夫をして日常生活に支障が出なければ問題ないわけですから、対処できれば不安も軽減されると思います。状況によっては、介護予防のためにデイサービスなどに通うことを提案する場合もあります。

避けたいのは、認知症への不安から人との関わりも避けるようになり、孤立してしまうことです。周囲が気づいたときには、認知症がかなり進行していたということになりかねません。独身ということなので、特に医療や介護に関する意向やお金の管理について早めに決めておいたほうがいい面もあります。認知症が進行してからだと、自分の意向に沿わないケアをされたり、財産管理などを担う成年後見人を自分で選べなかったりするからです。

適切な時期に受診するためにも、まずは自身が認知症に対する理解を深めること、地域の人たちとつながりをもっておくことが大切です。そして、地域の側では、認知症を正しく理解する人が増えて、認知症になったとしても周りの人たちや医療・介護などの専門職種の支援、さまざまな社会資源なども使って、本人が望む生活に近づけることができる態勢になっていると素晴らしいと思います。困ったらお互いさまと言って支え合える社会になるといいですね。

【まとめ】認知症になったのではないかと不安だが、独り身の年金暮らしのため、診断されるのが怖く、受診できないときには?

  • 認知症サポーター養成講座などに参加して、認知症について正しく知る
  • 地域包括支援センターで認知症についての情報を得たり、今の悩みをそのまま相談したりする

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