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リハビリの大切さと20年ぶりの再会

最終日に連載への掲載の許可もいただいて、リハビリの先生と記念撮影をいたしました。本当にありがとうございました
最終日に連載への掲載の許可もいただいて、リハビリの先生と記念撮影をいたしました。本当にありがとうございました

こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
今回の手術は、正直ギリギリまで実施するかどうかについて迷いました。
けれど、今は悩まされていた首の痛みやしびれ、不快感がなくなりましたので、やって良かったと思っています。

※手術については、この連載で2月18日に掲載された「手術を終えた、わたしへ」をご参照ください。

術後のリハビリは、とても早く開始されました。
そこで、首の手術をしているわたしは、
お二人のリハビリの先生に、手先の作業と歩行などの運動機能を毎日見ていただきました。
どちらの先生も、認知症のあるわたしを想定して、様々な機能訓練を本当に考えて良くしてくださいました。

初日のことです。
手先の作業の時、女性の先生がにこやかに声をかけ、迎えに来てくださいました。
二言三言会話をして、わたしは思わずびっくり!
なんと、わたしの息子のはじめてのリハビリを担当してくださった先生だったのです。

息子は3、4カ月検診で、異常な泣き方、目が合わないなどといった成長の遅れを指摘されたことから、出産した病院の小児科を受診しました。
そこでリハビリを担当してくださったのが、今回わたしの担当してくださったリハビリの先生だったのです。

それも確か、私の記憶では、私たち家族が静岡に転勤すると同時ぐらいに、先生もその病院を退職をされていたので、お会いすることがあるとは思ってもいませんでした。
驚きの再会となりました。

今回、全身麻酔、手術、入院をして改めて感じたこと。
病院には、医師、看護師以外にも、
患者が自宅や社会に復帰するために、多くのリハビリのスタッフが存在しているということ。
もっともっと言えば、他にもさまざまな分野でわたしたちが目にする機会が少ない専門職のひとが働いていることを改めて知り、感じることができました。

男性のリハビリ先生とは体幹などをしっかりトレーニング。外の風に当たりながらの歩行練習は気持ち良かった 
男性のリハビリ先生とは体幹などをしっかりトレーニング。外の風に当たりながらの歩行練習は気持ち良かった 

リハビリの先生は、患者ごとの担当制で、毎日同じ先生でしたので、
ときに、悩みを相談しながら、入院中や退院後の不安なども聞いていただきながら、本当に熱心に寄り添っていただきました。
わたしは気が付くとリハビリに行くことが、とても楽しみになっていました。
そこには同じように、何らかの病気やケガで体のリハビリをされている方の姿がありました。
同じように前を向いている「仲間」がいる。

この空間でやっていることを外のひとが見たら、
簡単そうに見えることをやっているなぁ……、
そんなふうに感じる人もいるかもしれません。

しかし、術後や麻痺(まひ)などの症状があるひとにとって、それは簡単なことではありません。
その小さな小さな積み重ねが、退院への大きな1歩になり、日常生活、そして社会へ戻ることへとつながっていくのです。

術後、看護師さんたちは、“認知症のあるわたし”に、その日の予定などを記したメモをわかりやすく、そしてニコちゃんマークなども加えてつくり、ベッドまわりなどに貼って下さいました下さいました「2月20日(月)左手の点滴は今日中に外します。また声かけます。リハビリ時間(13:30)」
術後、看護師さんたちは、“認知症のあるわたし”に、その日の予定などを記したメモをわかりやすく、そしてニコちゃんマークなども加えてつくり、ベッドまわりなどに貼って下さいました「2月20日(月)左手の点滴は今日中に外します。また声かけます。リハビリ時間(13:30)」

入院初日からいろんなことがありました。
初日から泣いて泣いて悔しい思いもしましたが、
それ以上にきちんと理解して下さり、伝わる方には伝わりとてもよくして頂きました。
わたしのことを理解しようとしてくださる方が多くいらしたこと、
認知症のことを理解しようと思ってくださる方が多くいたことで、術後の環境はリラックスすることが出来ました。

生まれたての小鹿のように力弱く歩けなくなったとき、
これがきっかけに、一気に認知症が進行してしまうのではないかとほんとに不安でした。

認知症のあるわたしたちには、健常者と言われるみなさんとは、
時間の進み方、景色の見えるスピード、そんなちょっとしたことがどこか違うように感じるのは、わたしだけでしょうか…。

術後は他の方よりも少しばかり回復が遅いことに、自分自身もどこかで焦りを感じていました。
歩くのもよちよちとした歩行、なんだかとても信じられない気持ちでした。
そんなときに、SNSでみなさまとつながり、たくさんの応援のメッセージや言葉をいただいたりしたことで、心の安定を保つことができました。

寂しいときは、わが家にいる愛犬(元繁殖犬)とテレビ電話。この子とこんなに長く離れ、不安な思いになっているのでは……と、心配でした
寂しいときは、わが家にいる愛犬(元繁殖犬)とテレビ電話。この子とこんなに長く離れ、不安な思いになっているのでは……と、心配でした

なんでまっすぐ歩けないんだろう……。
さまざまなことが、頭の中をよぎりました。
もしかしたら“認知症のあるわたし”だから、誰にもわからない薬剤等に敏感などリスクがあったのかもしれない……。そんな不安もありました。

そんなに急がなくても……。
そんなに急いで駆け抜けなくても……。
そう、周囲の景色がとても早く見える日があります。
どこか日常生活の中でポツンとひとりたたずみ、
周りのひとたちとの時間の進み方が違うような……。

講演会でも必ず話すこと。
わたしたちにとって、1分1秒が本当に大切です。

退院を目前にし、やっぱりわたしはこの病院が大好きです。
過去の緊急入院でもたくさんご迷惑をおかけしましたけれども。
亡くなった母も本当にとても大好きな病院でした。

退院したらやるべきこと、“課題”を整理して、体力回復したら
入院中に活動パートナーとも共有していた“やるべきこと”“やりたいこと”をスタートしていけたらと思っております。

そして、今までも病院など医療従事者向けなどの講師のご依頼もいただき、お話しさせていただいたことはありましたが、新たに得た“視点”“気づき”を踏まえて記憶が鮮明の内に、わたしの言葉で伝えていきたいです。

入院では、本当に様々な部署で働く医療従事者の方たちに大変お世話になりました。
そして、大切なリハビリ。
本当に、体のリハビリだけではなく、不安で凝り固まった心のリハビリまでしていただきありがとうございます。
そして、医療での治療を終えた後、必要な方は介護サービスを使うことも大切だと思います。
自分の身をもって、いろいろなことを感じ、いろいろなことを学ばせていただいた入院生活でした。

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