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足腰が不安な90歳の母 特養を希望も要介護2で入れず【お悩み相談室】

手すりを頼りに歩くひと、Getty Images
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地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。

Q.母は90歳で一人暮らしをしています。足腰が弱く本人も不安なので施設に入りたいと言っています。近くの特養に入れようと要介護認定を受けたところ、要介護2で入所の条件に当てはまりませんでした。要介護度が上がるまで待つしかないでしょうか?(60歳・男性)

A.特別養護老人ホーム(以下、特養)は、介護保険法に基づき、介護保険サービスを入居しながら利用することができる「介護保険施設」の1つです。こうしたこともあり、確かに特養は、原則的には要介護3以上の人が対象になります。要介護1、2でも、本人の安全が確保されないなど、緊急的な状況の際に特例的に入所が認められる場合もありますが、相談内容だけで判断すると、当てはまらないかもしれません。

お母さんは不安を感じているとのことですが、具体的にどのようなことに不安を感じているのでしょうか。不安の内容によっては自宅の環境などを整えることで、在宅での生活を続けるという選択肢も出てきます。例えば足腰が弱くなっているので転倒が不安ということであれば、手すりやスロープなどの福祉用具をとり入れて、自宅をより安全な環境に調整することでお母さんの不安は軽くなるかもしれません。福祉用具によっては、要介護2でも介護保険サービスで利用することができるものもあります。買い物に出かけるのが不安ということであれば、買い物代行サービスや宅配サービスを利用するという方法もあります。一人でいることに心配があるならば、訪問介護やデイサービスなどの利用を増やすこともお母さんの不安軽減につながるでしょう。要介護認定を受けていれば対象となる「小規模多機能型居宅介護」であれば、日中に通うだけではなく、短期間であれば同じ場所に宿泊できたり、訪問してもらったり柔軟に対応してもらえるので安心かもしれません。

どうしても特養に入居したいということであれば、要介護度の「区分変更」を申請するのがおすすめです。要介護度の結果通知書が届いてから3カ月以内であれば、役所に不服申し立てを申請することができますが、結論が出るまでに時間がかかります。それよりも、心身の状態が変化したときに申請できる区分変更のほうが、より早く結果が出るはずです。

もしかしたら、最初に申請した際の認定調査で実情が正しく伝わっていなかったのかもしれません。調査員の前では本人が普段以上にがんばるというのは、よくあることです。再度調査を受ける際には、家族が立ち会ったうえで、本人がいないところで調査員に現状を伝えることが大事です。お母さんの日常をよく知るケアマネジャーに立ち会ってもらい、現状を伝えてもらうのも1つの方法です。また、申請には主治医の意見書が必要ですが、主治医に自宅での様子などがしっかり伝わっていないというケースもあります。主治医にも普段の自宅での様子を伝えておくようにしましょう。

お母さんやケアマネジャーとよく話し合って、安心して過ごせるような環境を整えられるといいですね。

【まとめ】90歳で足腰が弱く、一人暮らしの母。要介護2と判定され、特養に入れないときには?

  • お母さんが具体的に何に不安を感じているのかを聞いて、自宅でも安心して暮らせるように環境を整える
  • 小規模多機能型居宅介護など要介護2でも対象となるサービスを利用する
  • 要介護度の区分変更を申請して、再度認定調査を受ける

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