考えが古い父 男性介護職員への当たりが強くて申し訳ない【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
地域包括支援センターに勤務する中村亘さんが、高齢者や介護の様々な悩みに答えます。
Q.同居している父(79歳)は訪問入浴のサービスを受けていますが、男性スタッフへの当たりが強く、「なぜ男なのにこんな仕事をしているのか。恥ずかしくないのか」などとののしります。考えが古いタイプなので仕方ないと思いつつ、スタッフの方に申し訳ないです(53歳・女性)
A.男性スタッフに対する言葉は、お父さんのやさしさから出た言葉ではないでしょうか。男性は外に出て仕事をして、女性は家庭を支える、といったかつての価値観をもっている人が多いお父さん世代の人は、介護は女性の仕事だと考える傾向があります。こうした価値観をもっていると、「男性なのにこの仕事をしていて、生活は大丈夫なのか」と心配になるのだと思います。男性スタッフのことを心配しているがために出た言葉が、ご家族からすると当たりが強いと感じてしまうのでしょう。
私自身も介護スタッフとして勤務していたときには、似たような言葉を言われたことがあります。そんなときは、雑談をしながら、自分の好きなことを話したり、仕事に誇りを持っていることを伝えたりして、なるべく自分という人間を知ってもらうようにしました。すると私に対する見え方が変わってくるようで、相手の言葉遣いが変化していくのを感じました。
介護職は、利用者の言葉の裏にある気持ちまでくみとることが必要だと思っています。この男性スタッフもなぜ自分にだけ当たりが強いのか、考えているのではないでしょうか。ご家族としては、お父さんはどんな仕事をしてきて、家庭ではどんな存在で、何を大事にして生きてきたのかなど、男性スタッフがお父さんを理解するうえでヒントになるようなことを伝えられるといいですね。男性スタッフを通してそれが事業所の人たちにも伝わると、どうすればお父さんがより満足してくれるのかをチームで考えるヒントにもなります。そしてお父さんに対する介護の仕方もいい方向に変わるのではないでしょうか。コミュニケーションがスムーズにいくようにご家族がお父さんや男性スタッフと一緒に雑談をするのもいいですね。
相談者は「スタッフの方に申し訳ない」と思われているので、男性スタッフに謝りたくなるかもしれません。そのお気持ちもよくわかりますが、私としてはお父さんの発言はやさしさからくるものだと感じるので、ご家族からお父さんの発言や態度を謝られると、違和感があります。それよりも「いつもありがとうございます」と感謝の言葉を伝えられるほうが、男性スタッフも次回もがんばろうと前向きになれるのではないでしょうか。
お父さんと男性スタッフとの間でお互いの理解が進み、よりよい関係になれることを願っています。
【まとめ】父が訪問入浴の男性スタッフに「なぜこんな仕事をしているのか」と失礼な発言をするときには?
- 男性スタッフの生活をお父さんなりに心配しているがゆえに出た言葉だと理解する
- 男性スタッフにお父さんの背景を伝えて、お父さんのことを理解してもらう
- 男性スタッフに対して謝罪ではなく、感謝の気持ちを伝える