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同じ話を繰り返す認知症の母 イライラして相づちも打てません【お悩み相談室】

食器を洗うひと、Getty Images
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社会福祉士の熊谷恵津子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

 Q.認知症の母(85歳)と同居しているのですが、話し出すと止まらず、キッチンやトイレにまでついてきてずっと話しかけてきます。同じ話をくり返すので相づちする気も起きず、イライラして何度か「うるさい」と怒鳴ってしまい、心を痛めています(58歳・女性)

A.お母さんは相談者に何かを伝えたいという気持ちが強いのでしょうね。それなのに聞いてもらえなくて拒絶されているように感じてさみしくなり、さらに感情的になって話し続けてしまうのかもしれません。聞く人にとっては毎回同じ話でも、お母さんは初めてだと思って話しているので、怒鳴られてもなぜ怒っているのかが理解できないですし、不安になるのだと思います。

かといって毎回お母さんの話をじっくり聞くのは、時間的にも精神的にも難しいことですし、イライラしてストレスがたまるのはよくわかります。

対策としては、「5回に1回はお母さんの話を聞く」といったように一定のルールを決めておくのはいかがでしょうか。話を聞くときには「お茶でも飲みながら聞くよ」とお母さんにも落ち着いてもらった状態で聞くことをおすすめします。大事なのは、きちんと聞いていることが、相手に伝わるようにすることです。お母さんの話すことをくり返したり、話を整理したりしながら聞くと「ちゃんと話を聞いてくれている」ということが伝わり、お母さんの気持ちが落ち着いてくるのではないでしょうか。精神的に落ち着けば、話し続けるという行動もおさまってくるかもしれません。

キッチンやトイレについてくるときには「手が離せないから5分待ってもらえる?」というようにお母さんの目をしっかり見て伝えましょう。作業をしながら、またはそっぽを向いたまま「ちょっと待ってて」と言ってもメッセージは伝わりません。言葉ではなく、態度で示すことが大事なのです。

また、お母さんは一日中話し続けているわけではないはずです。どんなタイミングで話が止まらなくなるのか、観察してみるのもいいと思います。もしかしたら、きっかけがあるかもしれません。認知症の人でよくあるのが、夕方になると症状が出るケースです。一日の疲れがピークになり、判断能力などが低下して症状が出やすくなると言われています。相談者自身も夕方は家事などやることが多く、それだけで頭がいっぱいになっていて、イライラしやすくなっているかもしれません。こうした状況を客観視できると、対策も見えてくるのではないでしょうか。

お母さんの話はすでに聞いたことがある話ですし、しっかり聞くのは時間的、精神的な余裕がなければできないことです。余裕をつくるためにも、可能であれば介護保険のデイサービスなどを利用したり、ほかの家族にお母さんの相手をしてもらったりする日をつくり、相談者の負担を、サービスや他の人にも分散させてほしいと思います。

うまくいかないときには、主治医に今の状況を伝えることも大切です。必要があれば、症状を落ち着かせるような薬が処方されることも考えられます。

ただし、薬を服用するにしてもお母さんの話をしっかり聞く時間を設ける、そのための環境をつくるということは、ぜひ実行してほしいと思います。

【まとめ】認知症の母の話が止まらないときには?

  • 「5回に1回は話を聞く」などと決めて、無理のない範囲で話を聞く時間を設ける
  • 相づちを打って、しっかり聞いていることが伝わるようにする
  • 手が離せなくてすぐには話を聞けないときには、相手の目を見てその旨を伝える
  • 話を聞く余裕をもつためにも、介護保険サービスを利用したり、ほかの家族に協力してもらったりする

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