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好きなものを食べてやせる食生活 総菜コーナーの充実から目を背けるべきか? 大学教授と管理栄養士が出した結論~その3~

マンガ・木村いこ

スーパーやコンビニの総菜コーナーの充実という現実に目を向けるべきか――。『好きなものを食べてやせる食生活』(池田書店)の著者、東京理科大学教授で医学博士の堀口逸子さんと管理栄養士の平川あずささんが、アラフィフや50代と一緒にWell-Being&Social goodを考える「project50s」で対談してくれました。日常生活に落とし込みながら「ゆるやかにしっかりやせる」方法と考える3回の記事の最終回「大学教授と管理栄養士が出した結論~その3~」は、ミドル世代やシニア世代に向けて進化し続けるコンビニやスーパーを上手な活用と、持続可能にする「見た目」の判断法です。

「コンビニで売っているものは○○だから」の先入観からの解放

――アラフィフや50代を迎えると、年齢に応じてホルモンバランスが変わってきたり、心身の状態が変わってきたり、そのほかにもライフスタイルや会社での業務内容が変わってきたりします。代謝、骨密度、フレイルなど、人生100年時代の後半に気をつけないといけないことが一気に顕在化してくる人生の分岐点がアラフィフや50代なのかもしれませんね。

堀口逸子さん(以下、堀口さん):そうだと思います。今、自宅の周りには、スーパーがあまりなくてコンビニが多いんです。

平川あずささん(以下、平川さん):堀口さんと話していて知ったのですが、コンビニのお惣菜がすごいこと。

堀口さん:栄養士さんは家族がいたらコンビニは利用しないんですよね。

平川さん:利用している人はいると思いますが、自分は利用していなかったので。

堀口さん:だって自分で作れちゃうから。

平川さん:そうです。

堀口さん:産業保健の現場で栄養士さんが出てきていろいろな話をしますが、いつも「それは無理」っていっているんです。

平川さん:でもこちらは、たとえば、ホウレンソウのおひたしを作るのはすごく簡単だと思っているわけですよ。

堀口さん:私は無理って言ったの。

平川さん:本当に「どうしたらいいの?」って思っていたら、堀口さんは「コンビニにいっぱいいいものがある」っていうんです。私も「じゃあそれを組み合わせていけばできますね」と変わったんです。

【ちょっとちら見せ!】3つの300は、1日単位で考えるのではなく、1週間単位で考えていく

――栄養士さんはコンビニを日常利用しないんですね。少しショックです。

平川さん:私はあまり利用していませんでした。

堀口さん:平川さんだけじゃなくて、私の知っている栄養士さんたちもコンビニを利用しないんですよ。だから、私が「コンビニにあるよね」っていうと、「え?」っていう顔をされるんです。

平川さん:そうなんですね。

堀口さん:それと平川さんは違いますが、栄養士さんの中には食品添加物は体に悪いと考えている人たちがいるから。そうなるとコンビニに行かないんですよ。自分たちで作ることによって体に良い食事ができると思っているから。

平川さん:そういう人もいます。私は当初、「コンビニは塩分高いかな」と考えていました。味が濃いから自分の家で作った方がおいしいと勝手に思っていたんです。しかし、今は減塩のものもいっぱい出ているし、野菜だけスティックにしたものも売っています。リンゴも皮をむいて切ってある。「じゃあ別にいいじゃん」って考えるようになったんですよね。

堀口さん:私も家で焼き魚できますよ。だけどガスレンジを洗ってまで魚を家で焼くことが面倒くさいわけですよ。1尾焼いた魚を総菜コーナーで売っているじゃないですか。家の電子レンジでチンとすればいいじゃないですか。

平川さん:それ聞いたとき、「効率的ですねって」いいました。

――スーパーとかコンビニの総菜コーナーが、どんどん充実してきています。共働きの人のためということもありますが、高齢者の一人暮らし、料理することが面倒になってきた人たちのためでもあります。

堀口逸子さん

カロリーでなく「ランチョンマットにお皿が納まる」で考える

――普通の生活の中で、どのように落とし込んでいったらいいのかということを考えると、結局一番知りたいことは、どれぐらい食べていいのかということかもしれませんね。

堀口さん:量で考えたら自分で考えられるって話だと思います。

平川さん:カロリーをいわれたら分からなくなっちゃうけど、これならどんな人でもできるよねって。

――管理栄養士さんはプロフェッショナルな中でお仕事をされてきたと思いますが、堀口さんのいうように簡単にまとめられるとは思わなかったんですか。

平川さん:今までは「それは個人個人違うから一概にいえません」というのが正直な気持ちでした。それは体組成や血液検査結果、体重の増減など経過とともにきめ細やかに見ながら決めていくことだったんですよ。だから目安ではいえるけど、現実に「あなたはこれだけ、何グラム食べれば大丈夫です」っていうことは考えられないっていうのが最初の印象でした。けれども、堀口さんと話しているとき、「いわれれば食品ってそもそも誤差はあるよね」とか、「肉も飼料によっても違っていたりするし」って思ったんです。

――そんなに違うのですか。

平川さん:計算上の値とぴったり同じというのはなかなかないと思います。お米でも地域や田圃によってすんでいる微生物も違いますし。そういうことを考えると、誤差があることを大前提に考えたら、「正確に何グラムっていえないかな」と考えるようになりました。食品表示でも、成分表で計算した値の場合には、本当に食品そのものをボンベで燃やしてみて、エネルギーがピッタリそのカロリーかっていうことは分からないわけですよ。

堀口さん:私がかつて栄養成分表示のセミナーに参加していたとき、参加された栄養士さんたちの質問が全部そこなんですよ。計測すると一致しない、どうしたらよいのか、と。そもそも、幅があるわけです。

――整理するとどうすればいいのですか。

堀口さん:みんなが普段使えそうなものに置き換えるということ。そうすると「量」なんだなと私は思いました。単位だとグラム。もう一点は見た目。「今日は量が多いよね」といったようにみんな感じることがありますよね。でもそれは何かしら自分の中に基準があって、「私のいつも食べているご飯茶碗に入っているご飯よりも多いな」ということがあると思います。だから、グラムと見た目の組み合わせなんですよ。

――加えて、堀口さんは、持続させるために食事の際の器も工夫されたそうですね。

平川さん:最初、堀口さんに「病院食の器どこで売っている?」って聞かれたんですよ。

堀口さん:あれに、同じような感じに盛りつけていれば再現できるから。グラムで測るのは面倒くさいし。入院しているときの2カ月間の病院食の記憶があるので、病院食のお皿に入れて多すぎれば「あ、これ、違うわ。見た目が」ってなるじゃないですか。

――結果的にどうされましたか。

堀口さん:大体のサイズを教えてもらって、似たサイズの器を使うようにしました。そうしたら、病院のご飯の茶碗がデカすぎたとか、いろいろ発見がありました。ご飯茶碗ってだいたい大・中・小といったスリーサイズがありますが、私はもともと中サイズを使っていたんですよ。ただ、私は今100グラムぐらいなので中サイズのご飯茶碗に盛ると、すごく少なく見えるんですよね。だけど小サイズに盛るとちょうどいいんです。そうして小サイズであればたくさん食べたと思って満足できる。そういうことが、科学的な研究から『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』(チャールズ・スペンス著)っていう本にまとめられています。認知科学や実験心理学の分野なので、栄養学の人たちが絡んでないんです。

【ちょっとちら見せ!】盛りつけから考える

平川さん:堀口さんが病院食の食器に変えようとした話がありましたが、お皿の数が増えてしまうと食べ過ぎになっちゃうので、ランチョンマットからはみ出さないということが大事だと気がついたのも堀口さんです。入院しているときはトレーに載せられてきますよね。そこから器が絶対はみ出さないじゃないですか。だからランチョンマットからはみ出さないっていうのも基準にしたんです。

――トレーは運ぶためだけではない。

堀口さん:私は以前はランチョンマットを使っていても器がはみ出ていたんですよ。

平川さん:結局、こう考えたほうが継続するんですよね。

堀口さん:びっくりしたのは平川さんから「野菜も食べ過ぎたら体重が増えます」っていわれたことです。野菜は体に良くて、太るものっていうと炭水化物というイメージを持っていたんです。

◆このシリーズはおわります。
「好きなものを食べてやせられるのか? 大学教授と管理栄養士が出した結論~その1~」(https://nakamaaru.asahi.com/article/14796745)「運動ゼロでカロリーを考えずにやせられるのか? 大学教授と管理栄養士が出した結論~その2~」(https://nakamaaru.asahi.com/article/14796753)もご参考にしてください。

堀口逸子さん(ほりぐち・いつこ)

東京理科大学薬学部教授。前内閣府食品安全委員会委員。長崎大学歯学部卒業。歯科医師。長崎大学大学院医学系研究科博士課程公衆衛生学専攻修了。博士(医学)。専門は公衆衛生学、リスクコミュニケーション。

平川あずささん(ひらかわ・あずさ)

管理栄養士。博士(生活科学)。内閣府食品安全委員会事務局・技術参与。食生活ジャーナリスト。大妻女子大学大学院人間生活科学専攻博士課程修了。専門は食育・栄養教育。

出版社・池田書店
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