診断結果は異常なし でも、認知症では?の疑念が晴れません【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
社会福祉士の熊谷恵津子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.夫(78歳)と2人暮らしをしていますが、最近夫が急に怒りだしたり、もの忘れも多いので認知症を疑い、2人で専門医を受診しました。検査の結果「軽度認知障害(MCI)でも認知症でもない」と診断されたのですが、相変わらずもの忘れやできなくなったことが多く、やはり認知症なのではないかと思ってしまいます(78歳・女性)
A.急に怒りだしたり、もの忘れが多くなったりするのは、確かに認知症のサインの一つなので心配ですね。診断に納得がいかなければ、別の専門医にセカンドオピニオンを聞いてみるのも1つの方法です。都道府県や政令指定市が指定し、設置されている「認知症疾患医療センター」では、認知症に関する詳しい検査を受けられます。地域包括支援センターの窓口でも認知症を専門としている地域の医療機関を紹介してもらえます。
認知症の診断は、画像検査のほか、問診や認知機能検査なども重視されます。認知症の人が医師や要介護認定を受ける際の認定調査員の前では、普段よりしっかりと受け答えをするというのは、よくあることです。セカンドオピニオンを聞く場合、夫の日ごろの様子などをできるだけ具体的に書き留めておき、医師に伝えられるといいですね。2人の専門医に「認知症ではない」と言われれば、安心できるのではないでしょうか。
環境を少し変えてみるのもいいかもしれません。高齢になると人間関係が狭くなる傾向がありますし、2人暮らしだとどうしても息詰まることがありますよね。よくあるのは、家にずっといて何もせずに文句だけを言う夫に対して妻はイライラしている一方で、夫の側は妻に頼りきってしまっているケースです。夫が急に怒りだすということは、何かしらフラストレーションがたまっているのかもしれません。
そこで、お互いに外にも目を向けて、それぞれの時間をもてるといいと思います。例えばカルチャーセンターや地域で開催されている体操教室などに参加すると、お互いの生活が活性化するはずです。年齢を重ねると新しいことを始めるのが面倒になってしまうので、得意なことに目を向けるのがおすすめです。
私が勤務する「なごみの家」(東京都江戸川区が開設している地域共生社会を構築するための福祉拠点)は、誰もが集える地域の拠点として設置されています。女性は気軽に立ち寄ってくれるのですが、男性は用もないのに立ち寄るのは難しい面があります。そこで、男性がメインの「哲学カフェ」を開催しているのですが、得意分野のテーマだと本当によくしゃべりますし、毎回参加される方もいます。男性の場合、得意分野に働きかけることが大事だと改めて感じています。
人間関係を広げることは認知症の予防にもつながりますし、夫の言動も変わってくるのではないでしょうか。再度受診する前に、環境を変える工夫にもぜひ取り組んでほしいと思います。
【まとめ】最近急に怒りだしたりもの忘れをしたりする夫。専門医に認知症ではないと診断され、納得がいかないときには?
- セカンドオピニオンを聞く。その際には日ごろの夫の様子をメモしておき、できるだけ具体的に医師に伝える
- お互いに人間関係を広げ、それぞれの時間をもつ