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父の介護が限界 でも、特養は満床 施設に入るお金もない【お悩み相談室】

布団から起きあがるひと、Getty Images

介護支援専門員の須原智子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.認知症の父(83歳)と2人で暮らしていますが、最近は症状が進行し、夜中に何度も起こされるなど私1人での介護は限界です。施設に入れたいのですが金銭的に老人ホームに入れる余裕はなく、費用が安い近くの特養は空きがありません。限界なので一刻も早く入居してほしいです(56歳・女性)

A.とても心配です。家族が夜間の睡眠をとれないというのは、共倒れになりやすい危険なケースであり、緊急的に相談者の休息時間を確保すべき状況ではないかと思います。施設を探すとしても、入居までを考えると少し時間がかかるので、一時的に介護保険サービスの1つであるショートステイ(短期入所生活介護)を利用して、相談者の休息時間を確保してはいかがでしょうか? ショートステイは連続して最長30日間預けられますが、週に3日、もしくは1カ月に1週間くらいでも、相談者の休息になると思います。

ただし、ショートステイはあくまでも一時的な措置になるので、本人も入居を望んでいるのであれば、入居できそうな施設探しも必要です。確かに特養(特別養護老人ホーム)は、介護保険を利用できる公的な施設なので、費用を抑えられますが、地域によっては、1施設につき、多いところでは数百人待ちといったところもあります(全国では29.2万人※厚生労働省令和元年発表「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」)。

入居の優先順位は介護の必要度や家族の負担の大きさなどによって決まるので、相談者の状況であれば、優先順位は高いほうかもしれません。ショートステイを利用しつつ、空きが出るのを待つのも1つの方法です。

また、申し込みの状況は地域差があるので、遠方でもよければ場所にこだわらずに空きがある特養を探すという方法もあります。とりあえず空きがある特養に入居し、近所の特養に空きが出たら移るということもできます。ただし、すでに特養に入居している場合、優先順位は低くなります。

このほか「通い」のサービスを基本に、状況に応じて「宿泊」や「訪問」を組み合わせられる「小規模多機能型居宅介護」も介護保険サービスで利用できます。この場合は、住民票がある市区町村の事業所しか使えませんが、「明日宿泊させたい」など急な場合でも宿泊用の部屋に空きさえあれば対応してもらえます。

有料老人ホームは、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設であれば、介護保険を使えますが、一般的には特養よりも費用は高くなります。なかには費用をかなり抑えられる老人ホームもあるので、担当のケアマネジャーに相談してみてください。いずれにしても現在のお父さんや相談者の状況、金銭面などについて担当のケアマネジャーに伝え、入居できそうな施設を探してもらいましょう。

現状では、夜間の問題が相談者の大きな負担になっていると思いますし、お父さんもつらいですよね。お父さんの睡眠の状況については、担当医にも相談してみるといいと思います。

【まとめ】父の介護が限界。近所の特養は空きがなく、有料老人ホームに入れる金銭的な余裕がないときには?

  • 共倒れになる可能性がある危機的状況なので、一時的にショートステイを利用する
  • 場所にこだわらず空きがある特養を探す
  • 地域の小規模多機能型居宅介護や予算に合った有料老人ホームを探す
  • 父の夜間の睡眠の状況について、担当医に相談する

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