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アンガーマネジメントから始まるケア

感情をリセットするスイッチ イライラを持ち込まない持ち帰らない【アンガーマネジメントから始まるケア(10)】

嫌な出来事があったとき、それが頭から離れないという経験はありませんか?

切り替えることができず、引きずっていると、介護や医療の職場ではケアの質や安全に関わるので、感情をリセットするスイッチをつくることが重要になってきます。介護や医療のアンガーマネジメントに詳しい横浜市立大学医学部看護学科講師の田辺有理子さんと一緒に考えてみましょう。(なかまぁる編集部)

嫌なことを引きずらない方法

怒りや不快な感情が持続する時間は、人によって違います。カッとなっても3歩も歩けば何事もなかったようにケロッとしている人もいますし、朝の出来事を夜まで引きずる人もいます。数日、数週間経っても何度も思い出してしまう人もいるでしょう。

仕事中にイライラしたままでは、目の前の作業に集中できず、仕事の効率が下がります。職場でのコミュニケーションにも悪影響を及ぼします。介護や医療の現場では、思わぬミスや事故につながる危険性があります。嫌な出来事や感情を引きずって過ごすより、上手に気持ちを切り替えられる方が、安全で効率的に仕事を進めることにつながるでしょう。

自分のスイッチを探す

イライラを引きずってしまう人には、感情をリセットするためのスイッチを準備しておくことをお勧めします。自分にとって心地良いこと、楽しいこと、好きなことなどを考えてみて下さい。それをイライラしたときのために準備しておくのです。安定した感情を保つためのリフレッシュと考えて良いでしょう。

時間が許せば、旅行に出かける、友だちと外食をする、といった思い切り楽しむような計画も良いと思います。でも、仕事が大変で、家事や育児や介護に追われる生活で、優雅に出掛けてなどいられないという人もいるでしょう。休憩時間にお気に入りの音楽を1曲聴くとか、チョコレートを1粒食べるとか、日常の中のちょっとしたことで良いのです。

私は、仕事のときにコーヒーをいれるのが習慣になっています。あるとき、これを私の感情をリセットするスイッチにしようと思ったら、いつもの安いコーヒーが薫り高く、おいしく感じられて、幸せなひと時ときに変わりました。

Getty Images

仕事とプライベートの切り替え

怒りや不快な感情を引きずる人は、仕事とプライベートを切り替えることも重要です。

家庭で生じたイライラを抱えたまま出勤したら、一緒に働くスタッフは何にいらだっているのか分からず、困惑します。何より、家庭での出来事に起因するイライラを介護施設の利用者や病院の患者にぶつけるようなことがあってはなりません。

また、反対に、仕事で嫌な出来事があって、仕事が終わった後ももんもんとしたまま家に帰ると、家事がはかどらなかったり、家族に八つ当たりしてしまったりすることがあります。働くお母さんの中には、つい子どもに当たってしまい、後悔するという人もいると思います。

あなたに合ったスイッチがあるはず

家庭のイライラを職場に持ち込まないこと、仕事で生じたイライラを家庭に持ち帰らないことを意識しておく必要があります。職場と家庭、仕事とプライベートで場面に応じて感情を切り替えるように練習しましょう。

出勤してユニフォームを着替える、名札をつける、髪を結ぶなど、仕事のスタイルになるときに、あるいは私服に戻るときに、仕事のオンとオフで気持ちも切り替えるように意識するのです。

通勤途中、四季を感じることも、私にとっては感情をリセットするスイッチとして機能しています。

◇参照:「こころの安定を保つためのポイント」(https://nakamaaru.asahi.com/article/14716152

楽しいイベントを作ってみては

夜になっても昼間の出来事が頭を巡ってしまう人や翌朝になっても切り替えられない人は、その日の嫌な感情を持ち越さないために、気持ち良く眠りにつくことが大切です。就寝前にストレッチをしたり、温かいドリンクを飲んだり、呼吸を整えたり、リラックスできる方法を取り入れてみましょう。寝るときに「今日も一日無事に過ごせた」「大変だったけどよく頑張った私」と自分で自分を労ってみるのも良いと思います。

気持ちを切り替えるために、楽しいイベントを作るほか、毎日の生活に取り入れられることや、いざというときにすぐできることなど、いろいろ準備しておきましょう。

次回は、「不要な怒りに振り回されないために」をテーマに考えていきます。

【終了しました】田辺有理子さんを講師に招き、セミナーを開催します

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12月25日(日)には、田辺有理子さんを講師に招き、午前中は一般向け、午後は介護者向けの有料セミナーを開きます(申し込みは別)。詳しくは下記のバナーをクリックしてください。

◆午前セッション(https://project50s1seminar.peatix.com)

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田辺有理子(たなべ ゆりこ)
横浜市立大学医学部看護学科講師
精神看護専門看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理師
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントファシリテーター(R)
看護師として大学病院勤務を経て、2006年より大学教員として看護教育に携わり、2013年より現職。医療・介護・福祉分野を中心に、介護ストレス、虐待防止などに関して、アンガーマネジメントやメンタルヘルスなどの研修、情報発信を行っている。
単著「イライラとうまく付き合う介護職になる! アンガーマネジメントのすすめ」(中央法規出版,2016)、「イライラと賢くつきあい活気ある職場をつくる 介護リーダーのためのアンガーマネジメント活用法」(第一法規,2017)、「ナースのためのアンガーマネジメント 怒りに支配されない自分をつくる7つの視点」(メヂカルフレンド社,2018)、「怒った人に振り回されない自分をつくる ナースのためのアンガーマネジメント2」(メヂカルフレンド社,2022)、共著「精神に病をもつ人の看取り:その人らしさを支える手がかり」(精神看護出版,2021)、雑誌「介護人財」(日総研出版)で2021年5月から「ゆりこ先生のちょっとこころを軽くする話」を連載中。

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