認知症当事者とともにつくるウェブメディア

なかまぁるクリップ

その人らしく最期まで(後編)~4つの居住スタイル 蘭の「認知症村」

PAINTING OUTSAIDE @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK、外で絵を描く認知症の人々
PAINTING OUTSAIDE @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK

9月の世界アルツハイマー月間に合わせて、認知症になっても自分らしく暮らし続けていけるための海外での最新の取り組みを紹介する企画の後編です。高齢者施設の事情に詳しいファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが、オランダの認知症村を訪ねた体験を報告します。
前編:日本人初 仏「アルツハイマー村」訪問記を読む。

小さな町には、スーパーや映画観、バーも

私が訪問した順番は、フランスのアルツハイマー村のほうが先だったのですが、実際には、2009年から現在のスタイルで運営しているオランダの認知症村(ホグウェイ)の理念をアルツハイマー村は引き継いでいます。アルツハイマー村の見学が決まったのちにそのことを知り、ホグウェイにも見学の申し込みをしました。

ホグウェイは、アムステルダム中央駅から車で40分ほど南に向かった郊外にあります。VIVIUMグループという、民営の介護事業会社が運営しています。アルツハイマー村ほど敷地が広いわけではありませんが、受付を抜けると、そこには小さな町が作られていました。

敷地内には27の居住棟のほか、スーパーや映画館、レストラン、バー、音楽ルーム、カルチャーセンターなどの施設もあります。認知症患者の方が、元気だったころに過ごしていたのとできるだけ近い形で暮らせることを目指したのがホグウェイのコンセプトです。

PASSAGE (MALL) @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK、スーパーマーケットの前の通り
PASSAGE (MALL) @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK

当日、私たちの案内をしてくださったイーロイさんによりますと、「入居者は24時間のケアが必要な重度の認知症の方々ばかりですが、認知症であることはその人の一部であって、すべてを言い表しているわけではありません。私たちは、認知症になる前の人生を、できる限り引き継げるようなサポートを目指しています。言い換えれば、残された人生をその人らしい暮らしができるように、最大限見守る努力をしています」とのこと。

最大限見守ることの例として、時間をかければ着替えができる入居者の場合、着替えが終わるまで手を貸さずに見守るように心がけていると説明してくれました。たとえ着替えに30分かかろうとも、じっくりと待ち続けるのだそうです。入居者ができることは、できるだけ本人にやってもらうのを実践しているからです。他の施設から移ってきた職員は、ホグウェイ式のケアに慣れない頃は手を貸してしまいそうになるそうですが、徐々に待つことに慣れてきて、ここらしいケアができるようになるそうです。

寝たきりになるのは最期の3~5日だけ

イーロイさんの話をうかがっていて一番驚いたのは、その人らしい人生を尊重し、見守るようなサポートを行っているホグウェイでは、寝たきりになるのは最期の3~5日間ですんでいるという事実でした。実際に町の中にはたくさんの入居者の方がいて、ボランティアスタッフと楽しそうに会話をしていたり、車いすに座ってのんびりと日なたぼっこをしていたりと、自由に過ごしていました。噴水のまわりのそうじを日課にしている入居者もいるそうです。全員が重度の認知症患者だと言われても、「本当に?」と聞き返したくなるほど、私たちがふだん街で見かけるのと同じような光景がホグウェイの中にはひろがっているのです。

趣向に合わせた居住棟で 自由に過ごす

URBAN LIFESTYLE LIVING ROOM @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK、都会的な暮らしを好む居住スタイル
URBAN LIFESTYLE LIVING ROOM @ VIVIUM ZORGGROEP / DE HOGEWEYK

ところでホグウェイでは、入居者の以前の暮らしや志向に合わせて、次の4つの居住スタイルから、自分の好みに合った居住棟で暮らしています。その4つとは、「URBAN(都会的な暮らしを好む)」、「COSMOPOLITAN(国際感覚が豊か・芸術を愛している人向け)」「TRADITIONAL(オランダの伝統的な暮らしを好む)」、「FORMAL(ハイクラスな暮らしを好む)。入居を待っている人数も、居住スタイルごとに異なるそうです。このように居住棟をスタイル別に分けているのは、以前の暮らしを引き継ぐためにも重要だと、イーロイさんは教えてくれました。ちなみに、開設当初は7つのスタイルに分けていたそうですが、時間の経過とともに4つに絞られたということです。

ホグウェイのほうも、利用料金をご紹介しましょう。毎月の利用料金は、2500ユーロ(約34万2500円・1ユーロ137円で計算)になっています。そして、こちらも所得による軽減措置が設けられていて、負担の少ない人では175ユーロ(約2万4000円・同)から入居できるそうです。

私は今まで日本だけではなく、海外の高齢者施設も10カ所以上見学していますが、認知症の方々が日中、これだけ自由に過ごしている姿を見た経験はありません。認知症ケアに定評がある高齢者施設であっても、認知症の方が街に出て、ひとりで買い物をする姿などは想像ができませんでした。ホグウェイは認知症の方のために作られた町とはいえ、認知症の方が欲しいものを自分で買いに行ったり、映画を見たり、趣味に没頭できる仕組みが出来上がっている現実に、かなりの衝撃を受けました。

それぞれ国の制度や宗教感などによっても、高齢者施設の運営方法は異なるのは当然ですが、今回アルツハイマー村とホグウェイを見学したことで、さらに多くの国の認知症ケアを知りたくなりました。まだまだ見学したい施設があるので、自分の足で動けるうちに国内はもちろん、海外の高齢者施設の見学も続けていこうと考えています。

※オランダの認知症事情については、こちらの記事もどうぞ。「認知症治療 これがオランダ流の新方式だ」

「世界アルツハイマー月間 2022特集」 の一覧へ

あわせて読みたい

この記事をシェアする

この連載について

認知症当事者とともにつくるウェブメディア