認知症のわたしがコロナに感染しました
こんにちは、若年性認知症当事者のさとうみきです。
私は4回目の新型コロナウイルスワクチンの接種を受けていましたが、
とうとう、7月にコロナ感染をしてしまいました。
幸いにも、前後に大きな予定も家族以外の濃厚接触者もなく、
安心いたしました。
最初はのどの違和感があり、夜中に目が覚めました。
思っていたよりも高熱は出なかったものの、
何とも説明しがたい倦怠(けんたい)感におそわれ、
ただただ、一日中ベッドの上でゴロゴロするしかありませんでした。
何よりも怖かったのが、
今までさまざまな活動を、感染対策を取りながらも休むことなく行ってきた生活から、
一変して、自宅療養生活となったことでした。
2、3日で自宅療養もすぐに飽きてしまうだろう……。
最初はそんな感覚でおりました。
体調も少しずつ回復の兆しがあった頃、
いつものように洗濯物や簡単な調理などをしようと思った時のことでした。
全く今までと違う感覚でキッチンに立っているわたしがいました。
今までできていた料理の手順、
家事の手順などがわからず、体が動かないのです。
洗濯機を目の前にボーと立っているわたし。
鏡に映る自分を見て、ふと夫に声をかけました。
「助けて!」
「わからないよ……」
この時、すでに夫も、わたしと同じ日に、感染していることがわかっていました。
夫も体調は万全ではない中で、
できない私を責めることもなく、家事を手伝ってくれました。
でも、ふとした表情がどこか寂しげであることに気づきました。
「ごめんね…。」
夫は「謝らなくていいんだよ」と言い、
その日の夜は麻婆豆腐を一緒に作りました。
2人して、出来上がった麻婆豆腐を食べましたが、
そろって最初に発した言葉は「味がしないね……」。
でも2人でその感覚を共有できることは、安心がありました。
夫はわたしが、できないことができるようになるのを待ってくれつつも、
無理にせかすこともなく、いろいろやってくれました。
「ありがとう」
わたしの口から自然と感謝の言葉が出ました。
こんなことを言ってしまうのは不謹慎だとは思うのですが、
同じ時に夫にも陽性反応が出たことが、唯一のわたしの救いでした。
もしわたし一人だったら、部屋からも一歩も出られず、
もっともっと孤立してしまっていたでしょう。
先のことを考えてしまうと不安ばかりです。
今、心配なことは、起きているとき、
1時間から最長でも1時間半が、座っていることの限界になっていることです。
体力がないのか……。集中力もなくなります。
熱やせきで、体調が悪いわけでもないのに……。
いつものようなオンラインミーティングも、集中力がなく、
終わった後に、最後までうまくこなせなかった自分への焦りが残ります。
質問がわからない。
うまく言葉が出てこない。
認知症のわたしが、コロナに感染して感じたことは、
熱や味覚症状以外に恐ろしいこと。
それは、コロナの後遺症でもあるといわれる
思考力の低下、気力低下、集中力の欠如が、いつ戻ってくるのかという不安です。
自宅療養生活が終わり、
先に詰まっている予定をこなしていける体力気力があるのかと、
ただただ焦りでいっぱいです。
どんなに予防していても、いつ誰が感染するかわかりません。
もし、ご家族に認知症の方がいる場合、
家族同士でいま一度、「コロナに感染したときはどう対応するか」について
話し合っていただければと思います。
実は、この原稿を書き終え、8月初旬になかまぁる編集部に提出をしておりましたが、
新型コロナの感染拡大が全国で続く中で、私自身が感染したことを皆様にお伝えすべきどうか悩み、掲載をいったん止めていただいていました。
その後、少しずつ回復して現在(8月30日)、DAYS BLG!はちおうじでの仕事、講演会などをスタートすることが出来たので、貴重な経験、テーマでもあると思い、掲載していただくことにいたしました。
わたしは今後も、身体を慣らしながらではありますが、
認知症の普及啓発活動を続けていきたいと思います!