「もう、だめかも」人は魔が差す生き物 自身をを守る最善の方法を知って
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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ああもう、だめかも。
終わりが見えない在宅介護に
私の心は限界を超えた。
ベッドに横たわる父に、
なにかしそうな自身におびえて、
外へ飛び出した。
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もう方々に相談も、し尽くした。
預金通帳を見ればこれ以上、やりようもない。
行き詰まったまま、町をさまよい歩く。
鳴り続ける携帯電話にさえ、
手を伸ばせない。
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それでも、外に出てきてよかった。
ほんの少しの時間、
私は私に逃げ道を作った。
きっとまだ、道がある。
疲れきっているとき、
人は魔がさすことがあります。
老いた親に手を出したくなる。
暴言を吐きそうになる。
自分自身を傷つけたくなる。
血のかよった人間なのだから、
当然のもがきではないでしょうか。
もし、
そんな心のアラームが
わずかでも聞こえたら。
とるものとりあえず、
その場から逃げてほしいのです。
数分でも構いません。
ささいな方法ですが、
私はこれがご自身を守る
最善の方法だと思っています。
心のなかから飛び出そうになる猛獣に
外の風をあてるように、
ただ、歩いてみる。
空を真上にして歩いていると、
少しずつ、生きている心地が
心身に返ってきます。
それはご自身とご家族をすくう、手立てです。
本当の逃げ道は、必ずあります。
いったん、ご自身の心を守ったら、
行き詰まりの先に、
「もう一度、あの人に話してみよう」
「あそこはもう、手を抜こう」
「気持ちをちょっと、切り替えられるかも」
そんなかすかな光が、必ず差してくるのですから。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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