認知症と診断され、泣き崩れた母 どう対応すればいい?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
地域包括支援センターでセンター長を務める由井洋子さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.母(79歳)の物忘れがひどくなり、念のために受診したところ初期の認知症と診断されてしまいました。母はその場で号泣し、毎日のように泣いています。告知についてもっと慎重に考えるべきだったと後悔すると同時に、どう対応すればいいのか困っています(50歳・女性)
A.お母さんにとっても家族にとっても、ショックなことだと思います。私は認知症という病気に対する知識がありますが、それでも診断されれば混乱して泣くと思います。今のお母さんの感情は当然のもので、感情を吐き出せているのは悪いことではないと思います。診断された際にも、相談者がそばにいたからこそ、泣けたのではないでしょうか。
なので、相談者が「告知についてもっと慎重に考えるべきだった」と後悔することはありません。認知症の告知については、医師の考えによるところもありますが、お母さんは初期だったからこそ告知したのだと思いますし、認知症の薬を服用してもらうなど治療をスムーズに進めるためにも病気について理解してもらうことは必要だったのではないでしょうか。
お母さんがショックを受けて泣いているのは、認知症に対して、「治らない」「進行していく」「何もわからなくなる」というイメージを持っているからかもしれません。確かに現状では認知症を治す薬はありませんが、進行をゆるやかにすることはできます。また、認知症になったからといって何もわからなくなるわけではありません。
そうしたことを理解するためにも、同じ認知症当事者の話を聞くのがいいと思っています。最近は認知症の人が講演したり、SNSなどで発信したりする機会が増えています。発信している人たちは、認知症を受け入れたうえで、いろいろなことに前向きに取り組んでいる人たちだと思います。一足先に認知症になった人たちの話は、お母さんの心に響くのではないでしょうか。認知症当事者の講演会などがあれば、ぜひお母さんを連れていってあげてほしいと思います。
泣いているお母さんに対して家族ができるのは、お母さんの気持ちに寄り添うことです。不安な気持ちに耳を傾け、「私たちがついている」と励ましてあげてください。今のお母さんの様子は主治医にも伝えて、相談してみるといいと思います。
お母さんは年齢的にはまだ若いですし、認知機能がある程度保たれているからこそ、ショックを受けているという面もあるでしょう。まだまだできることもたくさんあるはずなので、前向きになってもらえるといいですね。
【まとめ】認知症と診断され毎日のように泣く母。どう対応すればいい?
- 当然の感情であり、感情を吐き出せているのは悪いことではないと理解する
- 認知症当事者の講演会に行ったり、SNSなどの発信を見たりして、一足先に認知症になった人の声をお母さんに聞いてもらう
- お母さんの不安な気持ちに耳を傾け、「私たちがついている」と励ます