コマタエの 仕事も介護もなんとかならないかな?

母子今昔 受け継ぐファッションと頭部を支えながらのヘアカット

駒村多恵さん

タレント、アナウンサーとして活躍する駒村多恵さんが、要介護5の実母との暮らしをつづります。ポジティブで明るいその考え方が、本人は無意識であるところに暮らしのヒントがあるようです。

車椅子でもおしゃれでありたい

出演しているNHK「あさイチ」のインスタグラムで、「母と子の思い出コーデ」という企画があり投稿しました。母が若かりし頃に着ていた服を私の服と組み合わせ、現代風のコーディネートにするというもの。半世紀前の服を改めて見ると、繊細なレースに刺繍、柄の合わせ方やボタンのディテールまで、こだわりが詰まったものばかり。手仕事の素晴らしさに心が躍るとともに、おしゃれをすることが心から好きだったんだなと母の青春時代に思いを馳せました。

母と私。NHK「あさイチ」のインスタグラムで、母の服をアレンジ
母と私(左)。NHK「あさイチ」のインスタグラムの企画で、母の服をアレンジしたコーディネートショット

私が着用している画像と一緒に、当時の母が同じ服を着ている写真をアップしようとアルバムを開くと、母が美容室で髪をセットしてもらっている写真を見つけました。

月に一度は必ず美容室へ通い、髪を整えていた母。介護度が上がったことから、もう4~5年ほど美容室には行っていません。デイサービスで時々切ってもらっているものの、カラーリングまでしてもらえないので白いものが目立つようになっていました。何年か前に近所の美容室に行くことも試みましたが、どこも車椅子での来店は不可。そのままになっていました。

美容院で髪をセットしてもらっている母の姿
美容院で髪をセットしてもらっている母の姿

久しぶりに写真を見て、もう一度チャレンジしてみようという気になりました。
私の住む自治体には、要介護4以上になると、区内の指定サロンで一回400円前後で利用できる理容・美容券があります(自治体の独自事業は意外と多種多様なので、お住まいの地域のサービスを時々チェックするのはお勧めです)。理容・美容券でカラーは出来ませんが、指定サロンはバリアフリーだったり障害に理解がある店員さんがいたりするのではと考えました。すぐに申請し、リストにあるお店に問い合わせると「車椅子でも大丈夫ですよ!」と快いお返事。早速予約をして行ってみました。

まずはカット。母はこの4年で、頭を自力で真っ直ぐに留めておくのも困難となりました。クロスを付け、車椅子のヘッドレストを外すと、以前と違って首が後ろに倒れてしまいます。改めて、当たり前にしていたことが当たり前ではなくなっていることを痛感します。後ろに傾く母の頭を私が横から支えながら、カット終了。

車いすの背もたれを倒すことでシャンプー台に近づける
車いすの背もたれを倒すことでシャンプー台に近づけます

続いてカラー。車椅子と入れ替えるためにシャンプー台の前の椅子を移動するのですが、これが想像以上に重い! 男性の美容師さん2人に私も加わり、「せーの!」でやっと動かし、空いたスペースに母の車椅子を入れてシャンプー台の高さまで背もたれを倒し、さらにハンドルを折り返してシャンプー台に近づけます。
「よし! これで何とか首が台にのりますね!」
ようやくシャンプーにこぎつけ、カラーリングに至りました。
意外と大変でしたが、セット後の母は、程よいブラウンの入った黒髪がとても似合っていて、いろんな方が「若返りましたね!」「素敵!」と言ってくださいました。その時の母の様子はというと、目を閉じて「姫は満足しておる」と言わんばかりの澄まし顔。発語は少なく、感情表現も乏しくなっていますが、褒められている時は褒め言葉を聞きながら大概この表情です。まんざらでもないと思っているはず。親切に協力してくださったサロンの皆さんに感謝です。

駒村多恵さんとお母様
サイズもほとんど変わりません

介護生活ではどうしても、おしゃれは二の次になってしまいます。それでも、身だしなみを整え、おしゃれをすると、本人だけでなく周りも顔がほころびます。一方で、手助けする私の独りよがりにならないようにも気をつけます。カラーリングは長時間に及ぶので、負担になっていないか、本当は嫌なのに私が勧めているからと我慢していないか、母の様子に気を配ることも忘れないようにしています。本人は介護してもらっていると考えがちなので変な遠慮をしないように。

新しい靴でデイサービスに行った日は、「ピンクの靴が可愛いって、他の利用者さんに囲まれて人気でしたよ。お母様、嬉しそうでした」と、職員さんからそんな報告を受けることもありました。50年前に着ていた赤い服でデイサービスに行くこともあります。いくつになってもおしゃれは心を弾ませます。車椅子でもおしゃれは大切だと思うのです。

※ 前回「ヒヤリを越えて凍る背筋 猛暑のたびに思い出す、駒村家の熱中症事件」を読む

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