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もの忘れのせい?あたりちらす夫がストレスです【お悩み相談室】

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介護福祉士、介護支援専門員の山城裕美さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

Q.夫(79歳)と2人暮らしです。夫はもの忘れが多いのですが、年齢的に仕方ないと思っています。最近気になるのが、いつも怒っていること。「せっかく行った美術展がつまらなかった」「テレビの内容がくだらない」など、どうでもいいことに怒ります。生活に支障があるわけではないのですが、私にとってストレスです(72歳・女性)

A.「最近気になること」という相談者の気づきがあるということは、以前の夫は怒りっぽくなかったのでしょうね。いつも隣で怒りによる愚痴を聞かされて、ストレスに感じておられるのでしょう。

認知症の初期には、もの忘れや性格の変化がよく見られます。例えば夫は美術展に行ったということは覚えていても内容が理解できていなかったり、テレビで連続ドラマを見ても前回の内容を覚えていないからつまらなかったり、理解できないことや理解できない自分にイライラして、それが怒りとなって表れているのかもしれません。周りから見ればどうでもいいことかもしれませんが、本人にとっては切実で不安は大きいと思います。

もちろん、認知症ではなくても、高齢になるといろいろなことが煩わしくなったり、うまくできなくなったりして怒りっぽくなる場合もあります。しかし、一番近くにいる相談者が「こんな人じゃなかったのに」と感じているならば、一度「もの忘れ相談医」や「認知症サポート医」など地域の認知症に詳しい医師に相談しましょう。どの病院で相談すればいいかわからないという場合は、地域包括支援センターの窓口で教えてもらえると思います。いきなり医師に相談しにくいという場合も、まずは地域包括支援センターで相談してはいかがでしょうか。

事前に医師にアドバイスをもらったうえで、夫自身も診てもらうことになると思いますが、その際には「一緒に健康診断を受けに行きましょう」などと声をかけて病院に連れて行くと、スムーズかもしれません。診察の結果、より専門的な医療機関で脳の詳しい検査を受けた方がいいかどうか、アドバイスをもらえるはずです。

いずれにしても、何かに怒っているときは否定せず、ただ聞くのがいいと思います。否定されると怒りが増しますし、怒りをおさめづらくなります。話を聞きながらさりげなく「この花きれいね」など、別の話題に切り替えると、気待ちがプラスの方に向きます。もの忘れについても、覚えていないことを言われると怒りになるので、「今」感じていることや、先の話をするといいと思います。例えばテレビを見ているときに「さっきの話わかった? 先週はこういう話だったね」と過去の話をするよりも「この俳優さんきれいね」「次の話はこうなるらしいよ」など現在、未来の話をするといいでしょう。

夫婦で互いに思いやって生活しながら、医師や地域包括支援センターなど公的な相談窓口で、専門家のアドバイスをもらえるといいですね。

【まとめ】いつもどうでもいいことに怒っている夫にストレスを感じるときには?

  • 怒りっぽいのは認知症の初期症状の可能性があるので、まずは病院を受診する
  • 夫が怒っているときには否定せずに、話を聞いたうえでさりげなく別の話題に切り替える
  • 過去ではなく現在や未来の話をするようにする

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