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認知症の父は常にウールの上着 夏も着続けそうです【お悩み相談室】

ジャケットを着て歩くひと、Getty Images
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介護福祉士、介護支援専門員の山城裕美さんが、認知症の様々な悩みに答えます。

 Q.認知症の父(82歳)と2人暮らしです。父は出歩くのが好きなのですが、昔から気に入っているウールのジャケットがあり、季節を問わず必ず着用して出かけます。一度隠したことがあるのですが、激怒されました。これから暑くなるので心配です(53歳・男性)

A.お気に入りの一張羅があるのですね。外出の際には“人前に出る”ということを意識されていて、すばらしいと思います。

ただ近くで見ていると、以前とは違うお父さんの行動や性格の変化に戸惑い、正したくなることもあると思います。季節外れのウールのジャケットを年中着ていると、体調面で心配になるのは当然です。

認知症になって身だしなみを全く気にしなくなる人もいれば、お父さんのように服装に強くこだわる人もいます。これまで歩んできた人生が、ありのままに表れるのだと思います。“こだわり”は、生きてきたシンボルとも言えるかもしれません。だからこそ、“こだわり”を否定されたり何かにすり替えられたりすることは、人生そのものを否定されているように感じてしまうこともあるのではないでしょうか。

私が勤める施設に通う女性の利用者で、現役で仕事をしていたときからのこだわりで、同じデザイン、同じ丈の長さのスカートしか履かない方がいます。実用性や介護のしやすさを考えるとズボンのほうがいいと思いますが、私たちは本人のこだわりを尊重しています。一緒にスカートを買いに行き、決まったデザインのスカートを選び、丈を調整して縫います。スカートを履くと表情や言葉から、輝いていた人生の記憶を思い出されているのだろうなと感じます。

確かに暑い時季に、ウールのジャケットを着て出歩くのは心配ですね。高齢になると体温調節が難しくなり、熱中症になる危険性もあります。例えば、お父さんが着ているジャケットと同じメーカーの同じような色やデザインの夏用ジャケットを準備するのも手かもしれません。

私たちも同様のケースでは、ご家族と話し合いながら同じものを準備していただくこともあります。うまくいくこともあれば、ご本人から「これは新しい物やね」と言われてしまい、難しいこともあります。素直に心配していることを伝えて、一緒に夏用ジャケットを買いに行くのもいいですね。

スーツやジャケットにこだわりがある方は本当に多いのですが、誇りをもって仕事をしてこられたからこそだと思います。機会があればお父さんがウールのジャケットにこだわってきたエピソードを聞いてみてはいかがでしょうか。子どもは意外と父親がどのような内容の仕事をして、どのような役職についていたのかなど、細かいところまで知らないことが多いものです。現役時代の話を聞けると、知らなかったお父さんの一面がみえてくるかもしれませんね。

【まとめ】認知症の父が季節を問わずウールのジャケットを着て出歩くときには?

  • ウールのジャケットがお父さんにとって大事なものであることを理解する
  • 同じメーカーの同じような色、デザインの夏用ジャケットをプレゼントする、もしくは一緒に買いに行く

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