認知症になって変化した音の聞こえ方 ソワソワしてしまう僕に必要なこと
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
僕の心と体は、
小さなきっかけで
ソワソワしてしまう。
認知症になってから、
「あること」が変わったから。
それは、聞こえ方。
遠くの会話、小さな物音、
BGMの変調、空調の低い響き……
全部が混じりあうように、
でもある時は、突然それぞれが独立して
耳に飛び込んでくるようになったんだ。
音を拾いすぎてしまう、僕の耳。
いつも「疲れた」という言葉でまとめてしまう、
説明不足の僕に
あなたの声はいつだって、心地いい。
認知症によって、体や心に起こる変化は、人それぞれです。
だからこそ、当事者さんは
特別なそれを言葉にしづらく、
周囲から適切なサポートが受けづらい、
という困難があります。
例えば「音が聞きづらい」という
症状の中身もさまざまで、
当事者さんが自分に合った、
安心できる環境を得られるまでが長いのです。
なんて孤独な道のりなのでしょうか。
だからせめて周囲は、常に
当事者さんの体や心に起こっていることが、
「自分たちにはわからない」
という自覚が必要だと思うのです。
わからないと、相手を探ります。
しつこいかな、と迷いながら、
口にしようとした言葉をひっこめたり、
いやいやLINEにしよう、と文章でやり取りしてみたりと、
一筋縄ではいきません。
でも、それでいいのではないでしょうか。
当事者さんも迷う。
傍らの私たちも迷う。
一緒に揺れながら、
心地よさを見つけることが、
自然なプロセスだと思うのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》