ショートステイだけ夜中に大声を出す母 どうすれば?【お悩み相談室】
構成/中寺暁子
介護福祉士、介護支援専門員の山城裕美さんが、認知症の様々な悩みに答えます。
Q.認知症の母(85歳)を自宅で介護しています。たまにショートステイを利用しているのですが、スタッフから夜中に大声を出して騒ぐと言われました。家ではそんなことはありません。利用しているショートステイを変えたほうがいいでしょうか(57歳・女性)
A.お母さんにとってショートステイは、事情もわからずに連れてこられた知らない場所、という認識かもしれません。そう認識している場所で「今日はここで寝てください」と言われたら不安になりますよね。たとえ家族から「泊まってきてね」と言われていても、記憶にとどめておくことができなければ「もう自宅には戻れない」と大きな不安に襲われて、声を出してしまうのは当然かもしれません。このため「スタッフやほかの利用者に迷惑をかけてしまう」などと、引け目を感じる必要はないのです。サービスをあきらめて、家族がストレスを抱えたまま介護を続けることは、容易ではありません。
私が勤める事業所の場合、最初に利用者の自宅を訪問する際には、枕元にどんなものが置いてあるのか、ベッドを使用しているのかなど寝室の環境をチェックして、さらにご家族に「夜は明かりをつけたまま寝ますか?」「夜は何回くらいトイレに行きますか?」といった質問をします。利用者が泊まりのサービスを使う際に、できるだけ自宅と同じような寝室環境を整えるためです。例えば夜はラジオをつけたまま寝るということであれば、泊まりの際にラジオを持ってきてもらいます。
お母さんの自宅での夜の過ごし方や寝室の環境などについて、一度ケアマネジャー、ショートステイのスタッフと情報を共有する場を設けてはいかがでしょうか。
利用者が大声で騒ぐといったことがあれば、私たちはまずスタッフ同士で何が原因だったのかを話し合います。「本人の意に沿わない言葉をかけてしまったのかもしれない」「部屋のドアを開けたタイミングが悪かったのかもしれない」など、自分たちの言動を振り返って原因を探りますが、ご家族からの情報があると原因を見つけやすく、対応についても検討しやすいと思います。
対応を工夫したとしても、どうしても慣れない環境では大声で騒いでしまうということであれば、ケアマネジャーと相談して利用するサービス形態を変えたほうがいいかもしれません。例えば小規模多機能型であれば、「通い」「訪問」「宿泊」のサービスを同じスタッフが提供するので、普段は通いを利用して、たまに宿泊するといった場合でも、慣れた場所、顔なじみのスタッフがいて、安心して過ごしやすいということもあります。
相談者はお母さんを自宅で介護しているとのことで、ご苦労も多いと思います。ショートステイには、介護者のレスパイト(休息、息抜き)といった目的もありますから、これに懲りずにお母さんを安心して預けられるような方法、もしくは場を見つけられるといいですね。
【まとめ】ショートステイで夜中に大声で騒ぐ母。ショートステイを変えたほうがいい?
- お母さんは慣れない場で不安に感じているはず。大声で騒ぐのは当然のことだと理解する
- ケアマネジャーやショートステイのスタッフとお母さんの自宅での夜の過ごし方や寝室環境について共有する
- 対応を工夫してもらっても騒いでしまう場合は、ケアマネジャーと相談して小規模多機能型居宅介護に変えるなど、利用するサービスについて再検討する