人生の締めくくり となりの人の優しさが、生きていく糧になることも
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
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山田さんは、ひとり暮らし。
老いた体は眠りが浅く、
寂しさに毎晩願う。
「明日なんか来なければいい」と。
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重い体、弱った足腰では
簡単につまずく。
山田さんは思う。
「もう、いやだ」
けれど、駆け寄る人がいた。
それは、たまにあいさつするだけの
ご近所さん。
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友達でもない、
ましてや家族でもない。
それでもとなりの人の優しさに、
山田さんは願う。
「明日も、また生きたい」と。
2020年の国勢調査によると、
日本の高齢者(65歳以上)でひとり暮らしをしている人は、
671万6806人にのぼります。
毎年長くなるこの膨大な列に、
いつか私も並ぶんだろうなと
ぼんやりと思いつつも、
まだ44歳の私が、
人生の締めくくりの時期を迎えた人の
孤独など、わかるはずもありません。
よく、高齢者の孤独の解消法は、
生きがいを持つことだと言われます。
けれど山田さんのエピソードを思い出すたびに、
そんなに大げさなものじゃなくていいと、感じるのです。
ちょっと声をかけてくれる人がいる。
あの公園で、花が育っていくのを見たい。
裁縫をつづけたい。
そんな小さな希望が、高齢の方の
「ひとりでも、今日を生きる糧」に
なっているものです。
年齢を重ねた末の孤独は、
誰にとっても訪れかねない未来です。
だからせめて
となりの人の寂しさに今、
思いを寄せられたらと思うのです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
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