スマホは認知症の私の味方 決心の火を消さず 今日もひとりで外へ出る
《介護士でマンガ家の、高橋恵子さんの絵とことば。じんわり、あなたの心を温めます。》
![「行ってきます!」](http://p.potaufeu.asahi.com/bd37-p/picture/26737079/818e36d5804a2650d7eb59fc49d6ee75.jpg)
今日も私は、
ひとりで出かける。
不安が消えない私を見送りながら、夫は言う。
「なにかあったら、僕に電話してね。行ってらっしゃい!」
![町の中にいる人](http://p.potaufeu.asahi.com/c98b-p/picture/26737077/09d7ed7f0752864f57f0f58b514c42d0.jpg)
認知症がある私は時々、
いつもの町が、知らない風景に見えたりする。
あれ、どこに行くんだっけ?
そんな時はスマホを握りしめ、
子どものように泣きたくなる。
![町を歩く人](http://p.potaufeu.asahi.com/2f87-p/picture/26737078/f8bb1b1816e0e85f9432bca02d6daf74.jpg)
でも、大丈夫。
私は助けを求める方法を知っている。
今日も私は、私の道を行く。
認知症があっても、
ひとりで外出している方は、
もちろんいらっしゃいます。
外出中の困難の表れ方は、
お店の位置関係が混乱したり、
左右がわからなくなったりと、
人によってさまざまです。
お話を伺うと、その方々は必ずと言っていいほど、
迷った時の対処法を持っていました。
「迷ったら、すぐタクシーよ」
「難しい時は、人にわかる所までついてきてもらうんだ」
「なにかあったら、家族に電話するから」
迷っても、行く。
その決心の火を、
周りの私たちは、簡単に水をかけて消してはいけません。
けれど私は私自身の不安から、
「ひとりでの外出は危ないから、やめて」と
ある人の火を消したこともあります。
認知症は目に見えませんし、
高齢でも若くても発症します。
「なにか、お困りですか?」
町や駅で困っている人がいたら、
相手の年齢に関わらず、
勇気を出して、そう声をかけてみる。
きっとそれが、どなたかの火を
一緒に大きく灯すはずです。
《高橋恵子さんの体験をもとにした作品ですが、個人情報への配慮から、登場人物の名前などは変えてあります。》
![](http://p.potaufeu.asahi.com/nakamaaru/img/nakamaaru450_450.gif)