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解決!お金の困りごと

入院で急な出費 通帳と印鑑で親の預金はおろせる?代理人カードが便利

親の入院費用を払うために、銀行で、息子が、親の貯金からお金を引き出そうとしたところ「口座名義人でなければ引き出せない」と言われてしまいました。どのように備えておけばよかったのでしょうか。専門家にアドバイスをいただきます

年齢を重ねるとともに入院や介護などで突然まとまった金額の支払いをしなければならなくなる機会が増えてきます。「そうなったとき子どもに迷惑をかけないように」と、まとまった金額を金融機関に預けている高齢者は少なくありません。しかしせっかく準備したお金、ご本人ではなく、親族などが引き出すことはできるのでしょうか。架空の朝日太陽さんのエピソードをもとに考えていきます。アドバイスして下さるのは、高齢者にかかわるお金の困りごとに日々、金融機関として対応している京都信用金庫・くらしのサポート部の山村一代さんと安藤小百合さんです。

【今回のエピソード】
東京で働く朝日太陽さん(50)。地方で一人暮らしをしている母の月子さん(78)が、転んで骨折し、急きょ、入院。手術後は、なかなか体調が回復しなかったことなどもあり、入院期間は長くなりました。このため、治療費のほか、食事代、様々なレンタル用品代などが積み重なり、病院からの請求は思いのほか高額になりました。幸い月子さんの預金で賄えそうな金額だったので、太陽さんは、月子さんの通帳と印鑑を持って金融機関の窓口へ。ところが口座名義人ではない太郎さんでは、その場でお金を引き出すことはできませんでした。

備えのためのアドバイス

預金は通帳と印鑑が揃っていれば誰でも引き出せると考えてしまいがちですが、今は本人確認がとても厳格になっているので、たとえ家族であっても無条件で引き出すことはできません。なぜなら、子どもが親の通帳や印鑑を勝手に持ち出して預金を使い込むなど、預金者が不利益を被る可能性もゼロではないからです。

本人の意思確認ができることが重要

ただし、金融機関側が月子さんの意思(=預金の引き出しに同意していること)を確認できれば、太陽さんが代理で引き出すことは可能です。月子さんが署名・押印した「委任状」を太陽さんが窓口に持参する方法があります。窓口での預金引き出しに必要な「払い戻し用紙(払戻請求書)」を事前に金融機関で入手し、月子さんに自筆で記入してもらったうえで委任状と一緒に提出すれば、よりスムーズです。月子さんと太陽さんの身分証明書(運転免許証などできれば顔写真がついているもの)も、忘れずに持っていくようにしてください。
新型コロナウイルスなどの感染対策で入院中の月子さんに面会できなかったり、月子さんの利き手にマヒがあったりするなど、何らかの理由で自筆署名入りの委任状が用意できない場合は、金融機関の担当者が入院中の月子さんに電話をして意思を確認することもできるので、相談してみましょう。
また、病院の請求書を窓口に持参し、月子さんの口座から病院へ振り込んでもらうという方法もあります。「確実に月子さんのために使うお金」だと証明できれば、口座名義人でない人からであっても、ほとんどの金融機関は出金や振り込みに応じるはずです。

「代理人カード」の活用を

代理人カード

高齢の親をもつ方たちにぜひ知っておいていただきたいのが、すでに多くの金融機関が導入している「代理人カード」というシステムです。これは口座名義人ご本人用のキャッシュカードとは別にもう1枚、本人が承認したご家族などにキャッシュカードを発行するというものです。お子さんが代理人カードを持っていれば、突然お金が必要になったときにいちいち親に委任状をもらわなくてもATMを使ってお金を引き出すことができます。
ただし、代理人カードは、口座名義人ご本人が手続きをする必要があります。

まずは、金融機関へ問い合わせを

多くの金融機関で実施していると思われる対応方法をご紹介しましたが、全ての金融機関共通のルールがあるわけではありません。まずは口座がある金融機関に相談してみることが重要です。その際、いきなり窓口に出向くのではなく、「電話」で問い合わせることをお勧めします。どのような方法があるのかだけでなく、手続きに必要な書類などについても情報を得ておけば、準備した上で窓口に行くことができるので、二度手間になることはありません。
近年は、さまざまな手続きをインターネットでできる金融機関が増えています。委任状の書式などはわざわざ窓口に行かなくてもホームページから印刷できることが多いので、上手に活用しましょう。

親が高齢になると病気やけがをすることが増え、突然お金が必要になることは少なくありません。その時になって慌てないように、親も子もできる範囲で備えておくことが、お互いの安心につながるのではないでしょうか。

山村一代さん
山村一代(やまむら・かずよ)
1976年、京都信用金庫入社。事務課長、支店長、本店営業支援部長を経て2021年4月より、くらしのサポート部あんしんサポートデスク着任。AFP(日本FP協会認定)、金融業務3級シニア対応銀行実務コース(銀行ジェロントロジスト)、サービス介助士、京都検定2級
安藤小百合さん
安藤小百合(あんどう・さゆり)
2008年、京都信用金庫入社。窓口業務、事務チーフを経て2018年4月よりくらしのサポート部配属。2020年7月より同部あんしんサポートデスク着任。AFP(日本FP協会認定)、金融業務3級シニア対応銀行実務コース(銀行ジェロントロジスト)

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