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予定合わせが苦手な義姉に夫ファイヤー!日程調整の秘訣は? もめない介護43

タイプライターのイメージ
コスガ聡一 撮影

「毎日あわただしくて大変なのよ……」
介護サービスを利用しながら自宅で暮らしていたころ、義母がそんな愚痴をよく言っていました。

たしかに、義父母のもとには週2回ペースで訪問看護師さんがやってきて、健康状態をチェック。そして、介護が始まったばかりのころは週2回だった訪問介護(ヘルパー)も少しずつ回数が増え、介護3年目を迎えるころにはほぼ毎日来てもらっていました。さらに、週3回は通所介護(デイケア)があり、さらに月2回ずつ内科と歯科の往診があって……。たしかに、義父母はなかなかに多忙な日々をお過ごしでした。

そうなると、家族が義父母のもとを訪れるのも「いつでもいい」というわけにはいきません。他の予定とバッティングしないよう、うまく調整する必要があります。義父母をできる限り、まんべんなくフォローするためにも、家族で訪問予定を共有したい。介護が始まったとき、介護情報を共有するためのLINEグループは作成したので、共有するツールはバッチリ。ところが、予定の話になると、義姉の書き込みがピタリと止まります。

【次回はいつ頃行かれますか?】
【●月×日は何時頃いらっしゃいますか?】
とメッセージを送っても、なしのつぶて。他のことは返信があるのに、予定のことだけスッポリ抜けているといったことも、たびたびありました。あれ……?
やっと答えが返ってきた! と思うと【明日の午後に行きます】だったり、【今日これから行きます】だったり……。

剛速球ストレートvs既読スルー

当時、義父母は日にちの認識が怪しくなりつつあって、直前に予定の変更があると混乱してしまうことが増えていました。電話で言われたことを理解するのは難しくなっているけれど、FAXのやりとりはOK。訪問予定は日時を明確にし、貼り紙を作って壁に貼る。そうすれば、落ち着いてその日を迎えられるというような状態でした。

でも、どうすればそれを分かってもらえるのか……。悶々としていると、業をにやした夫が単刀直入に切り出しました。
【(訪問予定で有力だと言っていた)明後日、行けるのか行けないか見通しを教えてください。その日はヘルパーさんもケアマネさんも訪問看護師さんも来ます。せっかく姉貴が行くなら、してもらいたいこともあるかもしれないし、事前に見通しがわかっていて悪いことはなにひとつありません】

ここで「ごめんごめん!!」となれば話が早いのですが、そうは問屋がおろしません。約1時間後に義姉から届いたLINEメッセージにはこう書かれていました。

【予定がはっきり事前に言えないことは、申し訳なく思っています。なるべく様子を見に行きたいのですが、直前の連絡ではちょっと……ということであれば、長期休暇の時期しか難しくなってしまいます。(中略)頻度より数日前に予定をはっきりさせる方が助かるということであれば今回は遠慮しようと思います】

夫は「回数か予定かの二択じゃないだろう!」と激怒し、再びの剛速球ストレート! 対する義姉は既読スルーで対抗。約1週間、義姉とは音信不通になりました。

何度となく“焼け野原”を経験して、たどりついた答えは

その後も夫は繰り返し、義姉に「いまの両親は予定の把握自体が大変」「誰かに怒られるとかそういう問題じゃない」「ただでさえ混乱しがちなんだから、予定を伝えるのをベースにして、両親にストレスがかかるリスクを減らそう」と訴え続けました。

でも、義姉からすると、年の離れた弟(7歳差)に非難されているような気持ちになってしまうのか、なかなか肯定的なリアクションは得られず、どちらかといえば、だいたいキレられていました。ファイアー!

どうすれば、スケジュールを早めに決める大切さを伝えることができるのか。どういう言い方をすれば、不愉快な気持ちになることなく、聞いてもらえるのか。その方法を探して繰り返し夫と話し合いました。

そして、何度となく“焼け野原”を経験した後、たどりついたのは、
「お姉さんは何日あたりがご都合良さそうですか? 日にちがかぶらないよう調整したいと思いますので、予定や訪問候補日がわかったら教えてください」
と質問する方法です。あわせて、こちらの訪問予定も伝えます。

相手の言い分を探ると、思いがけない“落としどころ”が見つかることも

本当に知りたいのは訪問日であり、具体的な到着時間です。でも、義姉にとってそれを決めるのは、どうやらストレスがかかることらしい。だったら、そこは詰めないで置こう。少なくとも、親の生き死にに関係のないときはスルーしよう。そんな風に、目をつぶるスキルをわたしたちの側も身につけました。

些細なことですが、「訪問日を教えてください」よりも、「訪問候補日を教えてください」と尋ねるのも、観察と工夫のたまもの。そちらほうがグッと義姉の回答率が高まり、レスポンスも早くなります。

そして、返事がない場合は、同じ質問を投げます。当初、「繰り返し質問すること」はひどく感じが悪いように思っていました。実際、それで気分を害する人もいると思います。でも、義姉に関しては、そこは軽やかにスルーしてくれる性分のようだということもわかってきました。

家族間で介護への向き合い方が異なり、モヤモヤする場面に直面するのはスケジュール管理に限った話ではありません。勇気をふるって、正面切ってぶつかっても、わかり合えるどころか、さらなるモヤモヤの渦に巻き込まれることもあります。これ以上はつきあいきれん! と思ったときほど、あと一息。相手の言い分を探っていくと、思いがけない“落としどころ”が、ひょいと見つかるかもしれません。

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